第33話 新生活
『ここが君たちの新しい家だよ。』
そう言われて連れて来られたのは、花屋を営んでいる人の家だった。
しかもさっき一緒だった女の子も同じ家に引き取られることになった。
名前は…なんだっけメリン?なんでもいっか。
どうせ私のことを知ったら怖くなってすぐに離れていくから。
「あんたたちがメリスとリアンだね。ようこそゼフラ町へ。私は2人の住む家の家主、ティアだ。よろしく。」
「初めまして、私はメリスです!これからよろしくお願いします!」
「私はリアン。よろしく。」
「よし、2人の部屋は2階だ。探しておいで。」
「わーーーい!!!」
先に2階に上がっていったメリスを追いかけると、部屋が3つあり各ドアに札がかかっていた。
『メリスの部屋』・『リアンの部屋』・『書斎』
自分の部屋がちゃんとある…!
家ではお姉ちゃんと一緒の部屋だったから、ちゃんとした部屋があるのは嬉しい。
しかも札までかかってる。
あの女の人…ティアさんの手作りかな?ちょっと嬉しい。
でもあの人も私の奇病を知ったら嫌いになるだろうな。
コンコンッ
「はい?」
誰だろう。
って言ってもだいたい予想はついてるけど。
「メリスです。入ってもいい?」
やっぱりね。
いやって言っても入ってくるだろうし、しょうがない。
「いいよ。」
「ありがとう!わーーー!リアンの部屋と私の部屋ってちょっと景色違うね!!」
「そうなの?」
「うん。私の方は町を囲ってる壁の方だからちょっと景色が寂しいかな。」
そっか、3つの部屋の窓の位置違うし、見える景色もそりゃ違うよね。
私の部屋は、町が一望とは言わないけどそこそこ見える。
メリスの部屋よりは景色がいいのかな。
殺風景の部屋よりはまだまし。
でもなんでメリスはそんなに笑顔でいられるの?
「メリスは寂しく、ないの?」
「寂しい?突然なんで?」
「なんでって、いきなり家族と離れ離れになったし、殺風景な部屋だし。」
「んー、確かに寂しいかもしれないけど、奇病が治れば帰れるし、部屋はお花で飾れば問題ないよ!」
「そっか。メリスがそれでいいならいいや。」
奇病は直らないって知らないのかな?まだ会ったばかりだしそのうち学校とかあれば知るだろうからそんなひどいこと私から言いたくない。
会ったばっかりでメリスの事はそんなに知らないけどそういう前向きなところはすごいなって思う。
ちょっとだけ羨ましいかな。
「ねぇ、リアン。」
「何?」
「遊ぼ?」
「私は一人の方がいい。」
「でもさっき寂しくないか聞いたじゃん。」
「聞いたけど、今は寂しくない。」
「そっか…。」
すごい悲しそうな顔して部屋を出て行った…。
そんな顔して出ていかなくても。
ふふっ、犬みたい。
ごめんね。そんな顔されてもダメなんだ。
寂しいけど、いつ発作が起こるかわからないし、それをあなたが見たら絶対に今のままじゃいられなくなっちゃう。
この家にいられなくなったら困るから、仲良くなりたい気持ちもあるけどこの距離感が一番いいと思う。
『私もこんな病気じゃなければ普通に過ごせていたのかな…。』
ううん、違う。
私は多分悪い子だったから奇病なんかになったんだ。しかも人を殺したくなるんだもん。お母さん達にもそう言われたし。
家でお母さんに怒ったり、お父さんにわがままもいっぱい言ったから。
だから、奇病になって家族にもう会えない様にされちゃったんだ…。
いい子にしていればこんなことにはならなかった。
‐続く‐
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