第31話 勿忘草
夜が明けて、今日は親方さんとアダロが帰る日。
昨日は本当に色々あって疲れちゃっていたみたいで、いつもより起きるのが遅くなっちゃった。
リビングに行ってみるともうアダロは起きていた。
「おはようアダロ。」
「おう、メリスか。おはよう。」
「何してたの?」
「この町の様子を見てた。なんか帰るのが寂しくなって来ちゃって、なんとなく街並みを眺めてた。」
「そっか、今日帰るんだもんね。」
「なぁ、メリス。」
「なに?」
「もし辛いこととか悲しいことがあったら、俺が支えになるから。だから…」
そこまで言ってアダロは黙ってしまった。
難しい顔をしてどうしたんだろう?
「ありがとうアダロ。手紙送るから、そんな難しそうな顔しないで。」
「あぁ…。」
そういうとまた黙って下を向いてしまった…。
何かまずいこと言っちゃったのかな。
「おはよーー!!」
「おはようリアン。」
「どうしたの、朝からそんなにしんみりして。」
「何でもない。」
「そう?まぁ、深くは聞かないけど。」
「じゃぁリアンも起きてきたし、朝ごはん作るね。」
何でアダロが少し悲しそう?寂しそう?な難しい顔をしてるのか分からないけど、リアンのおかげで重かった空気が少し無くなってよかった…かな。
朝ごはんを作っていると、親方さんも匂いに釣られて降りてきて4人で朝ごはんを食べた。
「そろそろ、私たちは帰るとするよ。」
「もう、そんな時間なんですね。」
「また様子を見に来るし、手紙も出すからそんな悲しい顔はしないでおくれ。」
「大丈夫だよメリス。私も帰ってくるし2人とも一生会えないわけじゃないんだから。」
「そうだよね。」
「じゃあ、私たちは一回宿に戻って準備して、またあいさつしに来るから。」
「分かりました。」
そう言って2人はこの町にいる間泊まっていた宿に荷物を取りに行った。
一生会えなくなる訳じゃないってわかっていても、寂しいものは寂しい。
アダロが途中で言うのをやめちゃった続きも気になるし。
考えても本人に聞かないとわからないし、とりあえず2人が来るまでお店の開店準備でもしようかな。
カラン
「いらっしゃいませ。アダロ?どうしたのその花。」
そこには店の前で青くて小さい花の苗を持ったアダロが立っていた。
青いけどブルースターとは違う花を持っていた。
「これメリスに渡したくて。」
「いいの?ありがとう。きれいな花だね。」
「どういたしまして。この花は、俺の好きな花なんだ。」
「なんていう名前の花なの?」
「勿忘草」
「わすれなぐさ?」
「知らない?なら、後で調べてみ。それと、これ苗だから自分で育ててみてほしいなと思って。自分に咲く花とか仕入れてくる花じゃなくて、自分の手で育てる花もいいかなってさ。」
またアダロは私に新しいことを教えてくれる。
今まで自分で花を育てることはしたことはなかったけど、アダロからもらった花だもん、大切に育てるにきまってる。絶対に枯らしたくないな。
「初めてだからうまくいかないかもしれないけど、アダロからもらった花だから立派に育てるね。だから…だからね、定期的に花を見に来てほしい。」
「わかった。それまで俺のこと忘れるなよ。」
「忘れないよ、絶対に。」
「アダロ、もう行けるかい?」
「あぁ。」
「じゃあ、リアンちゃん、メリスちゃんも、また来るから。」
「また、いつでも遊びに来てください。」
そして2人は2人の町に帰って行った。
「帰っちゃった。」
「それより、メリス。」
「なに?」
「アダロからの告白はOKしたの?」
「告白なんてされてないよ?」
「そんな~隠さなくていいのに~?」
「隠してないって!それよりもアダロって私に告白してたの!?」
「あ、いや、ダメだこれは…。アダロに同情するわ。」
「ちょっとリアン!?どういうこと!?」
結局その後も自分で考えなさいしか言ってくれなくて、分からなかった。
でも私はアダロがお花をくれたこと、支えてくれるって言ってくれたことは嬉しかったし、忘れない。
後で調べると、アダロがくれた花は”勿忘草”と言う花で別名”forget me not”というらしい。
「”私を忘れないで”…か。絶対に忘れないから安心してね。次来る時までにはもっといっぱいの勿忘草を咲かせて待っているから。」
-Fin-
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【あとがき】
メリスの物語は最終話となります!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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-豆ちしき-
勿忘草はもう一つ花言葉があって、”真の友情”という花言葉があるんです!
有名なのは、名前の通り”私を忘れないで”です。
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