第30話 昔の話
「親方さん、本当にこの青い花使ってくれたんですね。」
「もちろん。私の気持ちも同じだったからね。」
「花言葉は”幸福な愛”ですよね。」
「それもあるが、私は”信じている”っていう意味合いでも使いたかったんだ。」
「素敵…。」
「長年やっていると少しフェミニストみたいになってしまうな。前に買ったときはメリスちゃんが言った方の意味で買ったんだよ。」
「やっぱり前に買っていった方は親方さんだったんですね。」
「気づいていなかったのかい。そうだよ。ティアから子供を預かることになったって手紙が来てね、様子を見に行ったんだ。」
「そうだったんですね。」
たしかにその時はまだ町に来て間もなくて、お母さんって呼ぶのもなんか違うかもって思いから店長呼びをしてたし、リアンとも姉妹って訳じゃないから3人ともなんとなく距離があった時期。
そんなときに、突然来たおじさんが綺麗な花だって言ってくれて、しかもその花を買いたいって言ってくれたことは私にとっては嬉しい言葉だったんだと思う。
あまりはっきりとは覚えてないけど、元々いた町では居場所がなくて寂しかったって記憶はずっとある。だから幸せになりたかったのかもしれないし、信じたかったのかもしれない。
それはたぶんお母さんもリアンも同じだと思う。
見た目とか、何かちょっと違うだけで差別されるような町。
そんな町から来た私たちだったからこそ、本当の家族になれたんじゃないかなって思っていいよね。
今はもう当時の気持ちは分からないけど、たしかに幸せになれるって信じたかった気持ちはあったのかな。
だからブルースターが咲いたのかもしれない。
「さて、長話しすぎてしまったかな。」
「こんなことないです!いろんな話を聞けて嬉しかったです。」
「そうか、それなら良かった。もう夜も遅いから子供たちは早く寝なさいな。」
「「「はーい!」」」
「じゃあ、おやなさい。」
「「おやすみなさい。」」
「いい夢を見ろよ。」
そっか、明日にはアダロと親方さんが帰っちゃうんだよね…。
2人には感謝してもし切れないぐらいの恩ができちゃった。
明日帰っちゃうと次はいつ会えるか分からないし、手紙も本当に届くかわからないもんね。
寂しいな、明日になって欲しいくないなんて思っちゃだめだけど、今日だけは許して欲しい。
--つづく
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【あとがき】
読んでいただきありがとうございます!
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最後までよろしくお願いします(*‘∀‘)ノ
※ブルースターと呼ばない地域もあります。
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