第29話 ブルースター


アダロが私に聞きたいことがあるなんて珍しい。

何かあったのかな?



「どうしたの?」


「前に花は興味がないって言っていたけど、今はどうかなって思ってな。」


「今は、うん。好きだよ。自分に咲く花も、お店にある花も。」


「そっか、よかった。リアンの部屋に飾ってあったリースってメリスが作ったんだろ?よくできてるって思った。」


「ほんと?初めて作ったからそう言ってもらえてよかった。ありがとう。最近はお母さんの花束の方がよかったって言われることが少なくなってきたし、みんなに喜んでもらえるこの仕事が好きになってきたの。全部、アダロのおかげだよ。」


「俺は何もしてない。メリスが頑張ったから。でも、好きになれたならよかった。」


「何もしてなくないよ、アダロと出会わなかったら花をこんなに好きになれなかったと思う。」


「なんでそう思うの?」


「だって、アダロは私たちを”普通の人と同じ”って言ってくれたでしょ?」



そう、私たちは奇病持ちだから普通の人とは違うって思っていたし、この町に連れて来られたってことは普通じゃないって思っていたから。質問攻めしてしまったあの日にアダロが言ってくれた”普通の人と同じ”って言葉がとても嬉しかった。

普通の人と同じなら、私なりの普通に過ごしていてもいいかなって思えたから。



「ありがとう、アダロ。」


「どういたしまして?」


「そういえば、親方さんの最後の作品ってどうなったの?」


「ちゃんと作ってたよ。大好きな人にあげるためにって言って、ちゃんとコンテストにも優勝して、親方の思ってる人に渡してた。」



すごい、コンテストにでて優勝できるなんて。

前にアダロに少し教えてもらったけど、コンテストでは課題作品と自由作品でいい評価を貰わないと優勝できないみたい。

課題作品はどんなお題が出されるかわからないし、自由作品も使えるお花が決まっていると難しそうなのに、大好きな人にって思いで作品作れるのってすごいよね。



「大好きな人...?あ!お母さんのこと?」


「そう、この町に来てしばらくたった後にお墓参りに行って見せてた。」


「そっか、お母さん嬉しいだろうな。でも外だと飛んで行っちゃうかもしれないからお母さんの部屋に飾ったらいいかも。」


「そうだな、じゃあ中に戻るついでに親方に伝えるか。」


「うん。」



戻った時に親方さんにお墓のお花をお母さんの部屋に飾ることを提案したら、そのつもりだったって言って、小さめの花束と小さい瓶いっぱいにいろんな花が入ってる置物を飾っていた。さすがにコンテストで出したやつはそのまま持ってこれないから、一部を瓶に詰めて持ってきたって。

お墓にはまた別の花束を置いてきててこっちは部屋に飾れたらいいな、ぐらいの気持ちで持ってきていた物らしかったけど、飾れてよかった。


親方さんが持ってきた花たちはすごく可愛かった。私がアダロに渡した青い花が真ん中にあって、周りをカラフルで大小様々な花が取り囲んでいてきれいだし、あの花を本当に使ってくれていたことが嬉しかった。


後々調べたらあの花は『ブルースター』って花だった。



私に咲く花は気持ちと同じだと思ってたけど、あの時の私はそう思ってたのかな?




-つづく-







――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【あとがき】


読んでいただきありがとうございます!

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最後までよろしくお願いします(*‘∀‘)ノ


※ブルースターと呼ばない地域もあります。

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