第16話 衝撃


「あぁ、…は?リアンがどうした――だと!?――だな。わかったすぐに向かう。」



今、リアンって言った?

気のせいじゃないよね…?なんで緊急事態の時にその名前が出てくるの!



 「あの、リアンに何かあったんですか?」

 

 「ごめんね、言えないんだ。急いでいるから、気をつけて帰ってね。」


 「え、ちょっ!」



このまま帰りたくないよ。

リアンに何かあったら嫌だし、どうにかして中に…あ。

警備してるおじさんいなくなったから、門から堂々と入れるのでは?

ラッキー!



 「失礼しまーす…」



昔だったらこんなことしちゃダメだって入らなかったと思うけど、今は大事な友達…ううん、家族の命がかかっているから何でもできそう。


ふふっ、リアンの性格が移ったのかな?

緊急事態ってことは、多分人がいっぱいいるところだよね。


あそこかな?


怒鳴り声とかも聞こえて結構怖い…それに、リアンの声らしきものも少し聞こえる。

もう少し近づいたら何が起こっているか分かるかな?



 「おい!リアン!落ち着け!こいつは処刑していい人間じゃない!!正気に戻れ!」


 「うるさい!うるさいっ!みんな、みんないなくなればいいんだ!!そうだろ!?なぁ゛!!」


 「このままだと戻れなくなるぞ!」


 「今のうちにはそんなのどうだっていいんだよ!戻れないなんて知ったこっちゃねぇ!!!!」



そこには全身が血だらけになったリアンの姿があった。

手には刃物らしきものを持っている。

彼女が殺人病っていうことは知っていたけど、実際に見るのは初めてだったと思うし、何より衝撃的だった。

いつも元気に笑っているリアンがあんな怒った顔でしかも血だらけになって目の前にいるなんて信じられない。



 「リアン…?どうして…?」



私は気が付いたらリアンの近くに行っていた。



 「なんでメリスがこんなところにいるんだよ!うちが今まで必死になって発作を隠してきた意味がなくなるじゃんか!!おい警備!!!」


 「あ、ちが…ごめん。」


 「うち、ここにいるって言ってないのに何でいんの?意味わかんないんだけど。」



全身血まみれの状態でいつもと全然違う口調で話すから別人と話してるみたい。



 「ごめん…リアンの事知っているって言ってた人がいたからから案内してもらった。」


「そう。まぁいいや。…早くここから去って。」


「でも…!なんでここにいるのかだけ教えて。」


「はぁ、こうやって発作が起こるとここに連れてきてもらって人を殺していたんだよ。お母さんが亡くなってからどうしても発作の衝動が抑えられなくなって、ここに閉じこもっていたんだ。まぁ、処刑人ってところかな?……怖いところ見せた、ごめん。」


「そうだったんだ。気づかなくてごめんね。」


「大丈夫。だから、メリスは家に帰っててほしい。うちのこんな姿見せたくなかったし落ち着いたら戻るから。」



リアンが今にも泣きそうな声でこんなお願いするなんて初めて。

でもよく考えたら、そうだよね。

発作が起きている場面なんて誰も見せたくないと思う。

ましてや人を殺したくなるならなおさらだよね。


でも、リアンを一人にしたまま帰るのも違う気がするし、あの店に一人で帰りたくない。

お母さんとの思い出がたくさん詰まったあのお店

いるだけでいろんなことを思い出して泣いちゃう…



 「ねぇ、リアン。一緒に帰らない?」

 


リアンが考えている無言の時間がつらくて、かなり時間がたった気がした。



「…ごめん。帰れない。」



帰れない…って

そんな言葉がリアンから出てくるとは思わなかった…。


なんで…?どうして?あのお店が嫌になったの?


どれだけ自分で考えても答えは出ないことはわかっているけど言葉に出してまた断られるんじゃないかって思うとすごく怖い。

なんでも言える仲だと思っていたし、二人なら大丈夫だと思っていたけど

リアンにとって私は家族じゃなかったのかな。



 「そっか。それじゃあまた迎えに来るね。」



口から出た言葉は私が言いたかったものとは違う言葉だった。




-つづく-






――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【あとがき】


読んでいただきありがとうございます!

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最後までよろしくお願いします(*‘∀‘)ノ

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