第15話 愛をこめて

 


そこには全身が鉱石に覆われた状態でベッドに横たわっているお母さんがいた。



 「嘘、だよね…?お母さん!?ねぇ、起きてよ!まだ眠っているだけでしょ!?さっきドクターは目覚めるって言ってた!寝ているなら早く目を覚ましてよ!!なんで…なんで誰もいないときに…なんで…嫌だよ…!!」



息をしているのか、心臓が動いているのか確認したくても鉱石が邪魔をしてどれも確認できない。

でも体中がそうなっているってことは…

ううん、まだそう決めたわけじゃない。


嫌だ…嫌だ…なんで今なの。


もし、私がもう少し早く帰って生きていたら話せたかもしれない?

もし、私が店を飛び出したりしなければ、お母さんと話せていたかもしれなかった?

もし…もしって考えたらきりがないけど、まだ信じられない。



 「ただいま~!メリス帰って来た?ドクターもしばらくうちにいてくれるって。」

 

 「こんばんは。僕もしばらくお世話になります。」


 「おかえりなさい…あのね、」



その後すぐにドクターが診察をしてくれて正式に活動停止と診断された。

目が覚めるって言ったことを信じていたのに。

さっきまで生きていたのに、お別れも言えなかった。



 「なんで!?ドクターは目覚めるって言ったじゃん!」

 

 「ちょっと、メリス辞めなって!」



ドクターにあたっても仕方ないことは分かっているけど、このなんとも言えない気持ち悪い感情をどうにもできなかった。

一通り騒いだ後、2人でどうしたらいいか分からずただただ泣くしかなかった。

その日は3人で過ごした方がいいと言ってドクターは帰った。





3日後、葬儀は子供だけじゃ難しいだろうからって、ドクターが仕切ってくれた。

日にちが立つごとに信じられない気持ちが増していって、起きたら目を開けて話しかけてくれるんじゃないかって何回も思った…。


そんな私の気持ちを余所に、落ち着かないまま葬儀は進んでいった。


この国では、火葬をするとなにが起こるかわからないという理由で、土葬になってるんだけど、亡くなっているといえ人を土の中に埋めるのはすごく複雑な気分。


苦しいよって言って出て来てくれないかな…。

この前咲いたカーネーション、お母さんに見てもらいたかった。



 お母さんへの愛をこめて



そう思いながらカーネーションをお墓の中に一緒に入れた。




ドクターから診断の詳細を聞かされた

前にも言っていたけど、お母さんは思っていたよりも体の中の進行が進んでいたんじゃないかって、外から見て進行が軽そうに見えても体の中が進んでいたなら人間は生きるのが難しくなっていしまうらしい。

そうだとしても、やっぱり目が覚めるって言われた後だったから余計に辛い。

また部屋からひょっこり出てくるんじゃないか、とか考えてしまう。

リアンは葬儀が終わってから帰ってきてないし、お母さんもいなくなっちゃったのに今度はリアンもって、ひどいよ。


そうだ、この前いった白い建物の所に行ったら何かわかるかな?

怪しさ満点だけど、今頼れるところはそこしかない。

3日も帰ってきてないし何かあってからじゃ遅いから、急いだ方が良いよね。





やっと見えた。

この前は無意識だったから気づかなかったけど、町から1時間ぐらいかかるところにあるし、町はずれにあるからか町からは建物が見えないから、そりゃ見たことないよね。

ここで何か知っている人がいればいいんだけど。


リアンのこと良く知っているって言っていた人がまたいるといいな。

それともあそこにいる人たちみんな知っているのかな?




 「すみません。リアンっていう女の子を探しているのですが知りませんか?」

 

 「リアン?あぁ…、その子に何か用かな?」

 

 「3日も家に帰っていないので心配になって探しに来たんです。どこにいますか?」

 

 「探しに来てくれたんだ。優しいね。彼女ならこの中にいるから心配いらないよ。」

 

 「そうなんですね!ありがとうございます!」



ここにいると安心して、建物の中に入ろうとすると声をかけたおじさんに止められた。


 

 「あー、来てもらたのに申し訳ないんだけど、ここは関係者以外入ることが出来ないんだ。ごめんね。」

 

 「え?関係者以外ってどういうことですか?家族は関係者じゃないんですか?」



警備の人から話を聞くと、どうやらここは刑務所らしい。

リアンは捕まってしまったわけではなく、ここでバイトをしているらしくて、3日帰っていないのはここ最近仕事が忙しく、帰ることが出来ないだけとの事。バイトって1人1つじゃなかったんだね。

一目合わせてほしいって言ってみたけど、どうしてもここの中に入れることは出来ないって言われちゃった。

諦めて帰るしかないかな—



 『緊急事態発生!!緊急事態発生!!』



緊急事態?何が起きたんだろう?

こんな警報が鳴っちゃったらリアンはもっと忙しくなっちゃうのかな。

早く落ち着いて2人で暮らしたいな。



‐つづく‐




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【あとがき】


読んでいただきありがとうございます!

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最後までよろしくお願いします(*‘∀‘)ノ



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