第17話 再会
これしか言える言葉がなかった。
どれを言ってもリアンを傷つけてしまいそうで、つらいのはお互い様なのは分かっているから。
刑務所から帰る途中の道のりが行よりもとても長く感じた。
気持ちが違うだけでこんなに違うんだ…
一歩一歩ふみだす足が重い
でも帰りたくないわけじゃないけど、もう誰もいないあの家に帰るのが嫌だ
だれかと一緒にいたい
「ただいま」
しーんと静まりかえった家がお母さんがいなくなってしまったことの現実を突きつけいるみたいで辛い
お母さんもリアンもいないこの家でどうしたらいいの
「お母さんに会いたいよ。」
あぁ、また花が咲く
今度はどんな花が咲くんだろう
青、紫、黒…
以前の華やかな花とは違う暗い色の花が咲く
全身が暗い色で染まってしまいそう
それから数週間私は何もせず過ごしていた。
近所の人たちがお店が開いていないことに不安になって見に来てくれたおかげでなんとかお店を再開することはできた。
でも自分に咲いた花を取ろうとは思えなかった
わたしに咲く花は私の感情とか体調によって変わるんじゃないかなって最近は思う。
暗い色が咲いているということは暗い気持ちになっているってことだから、明るい色が咲くまでは取らないことに決めた。
見た目は少し花だらけで見苦しいけど、今の私を見られるよりはまだましかな。
「メリスちゃん、バラをメインにしたの花束くれる?」
「今作りますね。お代は出来てからで大丈夫です。」
「わかったわ。20分ぐらいで戻ってくるから。」
ほら仕事には支障はないから大丈夫。
それにしてもバラがメインか、そしたらかすみ草にミニローズ、ダリアを一本入れたらかわいいかな?
あの奥様は常連だし、たしか赤とか紫が好きだったはず。
濃い目の色をした子たちを中心に選べばっと、よし完璧。
よくしてもらうんだよ。
「あの、花束を取りに来たのだけれど出来ているかしら?」
「はい。先ほどできあがりました。」
「ありがとう。メリスちゃんの花束は本当にきれいで私大好きなの。店長さんの時とはまた違った雰囲気で好きよ。」
「ありがとうございます。」
「また来るわね。」
店長と違う、か。
当たり前なんだけど実際に言われるとなんか心のあたりがモヤってする。
私の作る花たちの雰囲気が好きって言ってもらえるからいいのかな?
もっといろんな人に喜んでもらえるといいんだけど…
カラン
「あの、すみません。ここって花屋であっていますか?」
このデジャブのような聞いたことあるセリフ。
町に住んでる人たちがここを花屋だって知らないわけがないし、その声は聞き覚えのある声だった。
慌てて顔を上げると、入口には見覚えのある顔が—
「アダロ!」
「お久しぶりだね、メリス。元気だった?」
「いろいろあったけど元気だよ。一緒にいる方は?」
アダロの横にはアダロよりも少し小さいけどどこかオーラがあるようなおじいさんがいた。
着ている服はアダロとそんなに変わらない普通の服だけど、何か雰囲気がアダロとは違ってる。すごく懐かしい気がするからかな?
「この人は俺の親方だよ。やっと連れてこれたんだ。」
「初めまして、お嬢さん。私の名前はジンというんだ。よろしく頼む。」
「初めましてメリスです。アダロさんにはいろいろお世話になりました。二人ともよかったら奥の部屋で話しませんか?」
「そうだな、いろいろ話したいことがあるし少し邪魔させてもらう。」
ちょうどお店にお客さんもいなかったし、お店を閉めて二人を奥に案内した。
‐つづく‐
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【あとがき】
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