132.8話 侵食と準備万端 (ネア視点)



「何ともなかった!」



 聖女が帰ってきた。これで全員済んだから、出発できる。クロがいるらしい、巨大な黒い柱のようなものはどんどん膨張し続けている。



「ちょっと浄化してもらってもいいですか?」



 オリジンの真っ白だった髪が、三割ほど黒くなっている。他は白いまま。



「浄化で治る?」


「ええ。やってみてください」



「彼の者に浄化の光を、〖ピュリフィ〗」



 オリジンを優しい光が包む。



「ありがとうございます」


「面白い髪の毛だー」



 髪が元通り白くなっていた。色々気になるけど、後回し。



「……行く」


「壁役はお任せくださいでやんす!」



「あ、そうだ」



 聖女が何かを思い出した様子。



「浄化を付与することなんてできないんだけど、どうするの?」



 視線が、答えるであろうオリジンに集まる。




「人数分の浄化を私にかけてくだされば大丈夫です」



「そう?」


「これでもこの中で一番長生きしてますから、頼ってください」



 やっぱり何百、何千歳とかだろうか。長生きする手段はここではいくらでもありそうだから、そのくらいはいけそう。




「彼の者に浄化の光を、〖ピュリフィ〗。彼の者に浄化の光を、〖ピュリフィ〗。彼の者に浄化の光を、〖ピュリフィ〗。彼の者に浄化の光を、〖ピュリフィ〗。彼の者に浄化の光を、〖ピュリフィ〗。彼の者に浄化の光を、〖ピュリフィ〗。彼の者に浄化の光を、〖ピュリフィ〗。彼の者に浄化の光を、〖ピュリフィ〗。彼の者に浄化の光を、〖ピュリフィ〗」





 滑舌良すぎる。一息でやってるのも凄い。




「せいっ!」



 浄化の光を浴びて、輝いているオリジンが手を横に広げる。



 私含め、全員に同じ光が宿る。どういう仕組みだろう? 何らかのスキルだとは思うけど。あるいは神能か。




「皆さん、最初からハイペースでお願いします。立ち止まったら死にますので」





「【限界突破】、【勇猛果敢】、【聖剣解放】」



 勇者ハクから眩しい程の光が溢れ出している。





「準備完了です」



 ヨザクラがストレージから刀を取り出し、腰に差す。見ただけで業物と分かるほど、柄やさやの装飾が凝っている。





「【脂肪格闘家ファットファイター】、【脂肪消費】でやんす!」



 リューゲの体が一瞬デブになり、元の姿に戻ったら若干肌が赤みがかかり、蒸気も出ている。





「【聖印】」



 聖女ミース、魔法は流石にMP的にキツイのか、スキルを使ってる。全員の手の甲に変な紋様が浮かび上がってきた。





「【本能覚醒】、【鬼火】、【狂戦士化】、【謙譲の天使】!」



 天使? 何故?


 マツの背中に大きな翼、頭の上に光の輪が出現する。鬼の角が紅く輝いているのが違和感を覚える程の純白。





「私は準備もクソもないわね」



 シロは吸血鬼で、夜にこそその真価を発揮出来る。今は昼だから大して役に立たないかもしれない。





「フェッフェッ、こちらは大丈夫さね」



 おばあさんも準備は無いみたい。





「私は常に準備万端です。この浄化のスピードなら、一回だけ援護できそうです」



 オリジンは謎が多いけど、何となく、懐かしい感情を覚える。どこからか信頼感も湧いている。



 これは私のではなさそう。種族的本能? いや、【輪廻ノ主】が反応してる?



 だとしたらオリジンは、彼が言っていた――




「ネアさん、お兄様の代わりに仕切ってください」




 今考えることではないか。





「……【限定神化】」



 神々しいオーラと光の鱗粉が舞っている。



 さて、士気を高めよう。絶対私に向いてないポジションだから、早く



「……クロを助ける」




「「「「おー!!!!」」」でやんす!」




 オリジン、マツ、シロ、リューゲがのってくれた。他は助っ人だから仕方ない。



 別に悪い雰囲気では無く、でしゃばらないよう配慮したのだろう。




 黒い柱を目指し、走っていく。


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