111話裏 鬼人と竜人 (マツ視点)



「【ラッシュ】」

「【竜星拳】」



 拳と拳が高速でぶつかっている。少し押され気味ね。姉として、第一陣のプレイヤーとして負ける訳にはいかない。



「久しぶりに会ったと思ったら変な男に引っかかりやがって!」


「余計なお世話!」



 そもそもご主人様はご主人様であって、それ以上でも以下でもない。これだから思春期の男は……。すぐ恋愛と結びつけちゃって。そんな世の中単純じゃないのに!



「【ヘビーパンチ】」


「【竜鱗】」



 そこそこ全力パンチを腕を交差して受け止めるなんて。生意気ね。



「重っ、ゴリラかよ……」


「あ゛?」



 ぶっ殺す。



「【本能覚醒】、【鬼火】、【狂戦士化】」


「やっべ、【竜化】」



 たとえ竜になっても姉に勝てると思うなよ?



 まずは頭が高いからジャンプして頭目掛けてかかと落とし。



「ハア゛ア゛!」


 〈グヘッ!?〉



 地面に叩きつけてから、顔面にパンチ。




「【鬼拳】!」


 〈ちょっ……バベッ!?〉



 滅多に使わなかったけど、鬼火を燃やせるようにしよう。今までは拳でやりたかったから燃やせない設定にしてたけど。しつけには炙るぐらいが丁度良いと思う。



「火炙りの刑」


 〈あっっっっっつ! 何で鱗貫通して熱いんだよ!〉



 五月蝿うるさい。背中に乗って殴ろう。



わめかない。【ラッシュ】」


 〈グギャ!? くっ、あれ? 何か急に力が抜け――〉



 あっ、ポリゴンになっちゃった。まあ、いっか。


 とりあえずご主人様の下に馳せ参じなければ!





 走る。バフを切らずに全力で走る。



 〈あっ! メイドさん!〉



 上から声が? ……何あれ? 龍?



「敵ということでよろしいですか?」



 〈え? ちがう、です! 解除!〉



 小さめの龍が人の姿になって降りてきた。どこかで見たことあるような……?



「お久しぶり、です。タラッタです!」


 あぁ、魔王城に一緒にいた子供ね。居たわねー。



「よければお兄さんの所まで一緒に行く、です?」



「乗せてくれるということでしょうか?」



「そう、です! 【縁寄せ変化】!」



 龍の姿になれるのはすごい。ちっこいのに。



 〈さあ、どうぞ、です〉



「どうも」



 背中に乗ると浮かび上がる。そして天守閣の方へと飛んでいく。これなら早く着きそうね。


 あ、いた。そんなに進めていなかったみたいね。それにしてもかなりボロボロ。随分熱い戦いだったのが見てわかる。





 〈助けに行かなきゃ、です!〉


「待ってください」


 〈え?〉


「真剣勝負に水を差すのは御法度です。ここで終わるまで見ていましょう」



 〈で、でも……〉


「見ていましょう」


 〈はい…………〉



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