111話 聖女と接戦
高速で接近される。こっちも接近する。バフ盛り沢山でステータス強化されているが、目で追える。レベル差が結構あるのかもしれないな。
「【グランドスラッシュ】」
「【スラッシュ】」
火花が散る。アーツでは向こうの方が上位互換だろうが、【深化】のおかげでゴリ押しできてる。こちらに意識が向いてるので周囲に展開させた腕を横から叩きつける。
「彼の者のを守れ〖ホーリーシールド〗」
防がれたか。面倒だし、残りの49本の腕で一斉に聖女さんに攻撃する。
「きゃっ!?」
「ミース!」
グチャッという音がしてミンチになる。聖女さんの名前、ミースっていうのか。覚えとこ。
「大丈夫、集中して!」
「っ! うん!」
「はい?」
何が起きた? 確かにミンチになったはずなのに光が降って復活した。何かのスキルか? ズルいな!
「もう変な腕も無くなった! 諦めて降伏して!」
「フフフフフッ、面白いことを言うね。こんなのボクの力のほんの一端でしかないのに!」
とは言ったもののどうしよう。【深化】を信用してもゴリ押しでいけるのか微妙だからな。【混沌魔術】はまだ数発撃てるけど温存しときたい。こうなったら脊椎反射で会話して考える時間を稼ぐしかない。
「君からしたらボクは悪だろうけど、ボクだって仕方なくこんなことをしてるんだよ。だからそこを退いてくれないかな?」
思い出せ。俺の手札はまだあるはずだ。【火魔法】、大した効果は見込めない、【光剣の舞】もクールタイムがそこそこあったから温存。あとは……
「そういうわけにはいかない! 私達には正義のもと、貴方を倒さなければいけない!」
アイテムのスキルか!
「君にとっての正義とは何だい?」
「貴方みたいな人を軽々しく殺す人からみんなを守ること。勇者は弱い人の味方であるべきだから!」
今使えるのはお面、布都御魂のバフスキルか。それだったらやることは単純だ。
「それは君のではなく、世間一般のものなんじゃないかな?」
「そ、れは……」
お、適当に喋ってたら何か諭してるみたいになってる。戦いとは精神攻撃が基本だから恨むなよ。
「世間一般の正義という曖昧なもので裁くのは傲慢で、正義なんかではないよ。ただの理不尽だ」
「……」
よし。これで弱体化できたな。何故かバフだったであろう光の色も量も減っている。
「――清き力で抑え込め【封印】」
「な!?」
こっそり詠唱してたのか。ミースさん、なんて恐ろしい! 発した言葉とぱっとわかる感じだと【深化】が使えなくなってる。黒かった体が元に戻ってるし。他は使えている。【飛翔】は解けてないからな。
「ハクちゃん、今は目の前の相手を倒そう」
「う、ん。そうね」
若干図星で
「【
「うっ……」
「?」
ハクさんには効いたけど、ミースさんには効かなかったようだ。悲しい思い出を追想させるとかいう効果だったはずだから、ミースさんは幸せに生きてきてるんだな、羨ましい。
どちらにせよハクさんに隙ができたので倒しちゃおう。戦場で呆然としながら棒立ちは感心しませんなー。
「ほいっ!」
「ハクちゃん!!」
バフかけ忘れたが、気にせず斬る。しかし、ミースさんがハクさんを突き飛ばした。
「ミース!!!!」
「負けないで……」
身代わりになったミースさんを斬る。今度こそポリゴンになった。復活は一回だけみたいだ。助かった。
「ハアアアアアアアアアァ!!!!」
「【パリィ】」
突っ込んできたので難なく弾く。
「深化」
やっぱりまだ使えないか。時間経過で解けるタイプかな。
「【真・鼓舞】」
緑のオーラが広がる。これで向こうもバフがちょっと剥がれてるし互角ぐらいか。あとは気合いで勝負が決まる。
お互い両手で剣を握り、睨み合う。俺はお面越しだけど。【飛翔】はクールタイムで使えないか。
「通してもらうよ」
「絶対に通さない」
「「【ダッシュ】」」
走る。斬る。お互いの得物がぶつかり合う度に火花が散り、重い衝撃を両手で感じる。
ただがむしゃらに剣を振る。数合、十数合斬り結ぶも一向に致命傷には至らない。キリがない。
「【バックステップ】」
後ろに下がり、一旦仕切り直す。魔法も使った方が良いだろうか。
「【ダッシュ】」
「ッ! 【サイドステップ】」
下がったのを逃がさないと言わんばかりに詰めてくる。念の為横に避けて回避。そのまま……
「【壁歩き】」
民家の壁を走って天守閣の方へ向かう。
「くっ、させない! 【疾走】!」
また追いかけてくる。じきに追いつかれるだろうが、もちろん罠だ。角を曲がって路地裏に入る。
思いっきり跳んで路地裏の民家の屋根に着地。そのまま走る。
「待て!」
躊躇することなく入ってきたので、
「火よ小さく爆ぜよ〖プチファイヤボム〗、火よ小さく爆ぜよ〖プチファイヤボム〗、火よ小さく爆ぜよ〖プチファイヤボム〗、火よ小さく爆ぜよ〖プチファイヤボム〗」
後ろの建物に当てるように飛ばす。爆発音とともに家が壊れ、瓦礫が飛び散る。
「くっ……」
怯んだところにトドメ。
「〖chaotic arms〗」
十本同時に叩きつける。
「【スラッシュ】!」
腕が全て消えてしまった。決めきれなかったか。
「ハァハァ、【天元突破】!」
金と銀のオーラのようなものが噴き出す。まだギアが上がるのかよ。向こうはかすり傷や細かい切り傷で血が相当出てる。こっちも細かい傷がある。
向こうは体力が限界に近いが、ここに来てバフの上乗せ。
五分五分だ。すぐに決着が決まりそうだが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます