112話 勇者と黒幕もどき
こっちの動きを待ってカウンターしようとしている。それならこっちは遠距離攻撃するだけだ。
「火の槍よ〖ファイヤランス〗」
「らあ゛!」
一振りで掻き消された。そして距離を詰めてくる。
「【バックス――」
「【飛斬】!」
「うおっと」
ギリギリでジャンプして避けれた。
「てやっ!!!!」
「クッ、【飛翔】」
空中にいる時に攻撃が来たが、クールタイムが終わっていてギリギリ回避。これで空中から一方的に攻撃できる。急いで高度を上げる。
「だあ゛あ゛ぁ!!!!」
「な!? 【パリィ】」
路地裏で民家がある所まで下がったから壁を足場に跳んでここまで来やがった。壁キックとかふざけんなよ。
でも、
「空中戦を仕掛けたのは失敗だね【光剣の舞】」
光の剣を無防備になっているハクさんに差し向ける。防げないように全方向から攻撃する。
「だらあ゛ぁ!!」
防御を捨てて剣をぶん投げてきた。まずい。近いせいで防げない、避けられない。
「クハッ……」
「痛ッ!」
振動でバランスが崩れ、墜落。ハクさんは今ごろ串刺しになってるだろう。
「あれ?」
視界がいつもより明るい。下を見てみる……
「壊れた、いや、守ってくれたのか」
狐の面が割れていた。おかげで生きてた。本当にありがとう。よく頑張ってくれた。
「……ま、だ!」
嘘だろ……。串刺しになって全身穴だらけ、血まみれで、まだ立つのか。
「もう諦めなよ、こっちはまだHPそこそこあるよ?」
「わた、しは勇者、私が折れる、わけには……っ!」
RPへの執念か、元の性格か。十中八九後者かな。俺だったら前者だけど、ハクさんからは本物の匂いがする。
本物の正義の奴隷だ。あのなんとかの
「貴方、あの時の、クロ、さん?」
あぁ、お面が取れてたんだったな。フードもさっきの墜落で取れちゃってる。バレちった。
「そう、ボク、いや俺はクロだ」
「でも、あの時……」
「何でよく刑事ドラマとかでアリバイを確認すると思う? その証言が偽物の可能性があるからだよ。俺の場合は俺自身が犯人だったわけだけど」
「な……」
「要するにもっと人を疑うことを覚えた方が良い。お前ら全員滑稽だったよ」
正義、それを見つけれないなら俺が道標となろう。俺は黒幕で、必要悪で、絶対悪でいい。対立の先に進化があるのだから。どんな形で対立が終わってもその時にはきっと、得るものがあるはずだから。
自分の為に俺は君たちの敵となる。その中で孤独になったとしても。
「【天元突破】!」
もう強引にバフを重ねすぎている。あとで何かしら反動があるだろう。俺には関係ないが。
「【深化】全身15%」
『【深化】出力:15%を確認』『レベルが強制的に上がりました』『レベルが強制的に上がりました』『レベルが強制的に上がりました』『レベルが強制的に上がりました』『レベルが強制的に上が………………
【封印】の効果時間は過ぎていたらしい。よかった。
「やーーー!!!!」
「らあ゛あ゛あ゛ぁ!!!!!!」
拳。お互い自分の得物はどこかへ落とした。あるのは己の身だけ。
それぞれのパンチがお互いの頬に突き刺さる。お互い、地面に体を引きずらせながら吹き飛ぶ。くそ痛い。
「ハァ、ハァ、ケハッ!」
血を吐き出してる。もう限界だろう。こっちはバカ多いHPのおかげでまだ動ける。
「ハァハァ、よく頑張った。あっぱれだ」
「く、そ――」
立ったままポリゴンとなっていく。長い戦いのせいで何故か散りゆくポリゴンが幻想的に見える。あ、やべっ、ちょっとふらっとする。
「解除」
何かアナウンスが聞こえるが、後回しでいいや。とりあえずストレージからポーションを出そう。
〈大丈夫です!?〉
「ご主人様、無事ですか?」
「あ、うん。何とかね」
小さめサイズの龍とマツだ。マツの知り合いだろうか? 小さめと言ったが、バスより大きく電車より小さいぐらいなのでかなり大きい。
「誰?」
〈あっ! 解除!〉
龍が人の姿になっていく。すごい綺麗な光景だ。
「タラッタ、です!」
「え? え〜〜!?」
どうして、こんな可愛らしい子があんな龍になれるようになったんだ? あの魔王、やったな。説教案件だ。
「それより、鬼さんを倒す剣を貸して、です」
「うん? これでいい?」
ストレージから童子切安綱を渡す。
「ありがとう、です! 【縁寄せ変化】!」
「え、ちょ…………」
龍の姿になって飛んでいってしまった。
「行っちゃいましたね、ネコババでしょうか?」
「いや、何か事情があるんじゃない?」
あの子は“貸して”と言ったんだから。
「とりあえず、天守閣に行くよ」
「ご主人様、よければ抱っこかおんぶしましょうか?」
「走れるからすんな」
現在進行形でポーションをちまちま飲んでるのを見てるだろうが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます