106話 電話と知り合い
意識がハッキリしてきた。
「ここはどこ? 俺は誰?」
「何言ってるんですか」
リスポーン地点でマツがいた。待っていたのか。
「言ってみたかっただけ」
「勝てないとは思ってましたが残念でしたね」
「ガラス玉は壊したから試合に負けて勝負に勝ったようなもんだよ」
「おー、よくあれ相手に壊せましたね」
その場に座っているマツの横に座って話を続ける。
「お陰様でねー」
「それは何よりです」
「あれってユニークスキル?」
「そうみたいです。【謙譲】っていうののアーツですね」
なるほど。そのままだな。
「パッシブで状態異常の謙譲がつくみたいです。あと傲慢に対する特攻と被特攻を得るとも書いてあります」
「へー」
狂戦士化のまま自我を保てたのは気合いじゃなくてそのスキルの影響か。傲慢に対する云々は有名な七つの大罪と対をなす七つの美徳の一つか。すごそうなスキルだな。
「アーツがあるってことはレベルもあるの?」
「いえ、無いです」
ユニークスキルにはレベルが無いんだけっけ?
「他にもアーツがありそうなのですが、非表示状態になっていまして」
「ほえー」
そういう仕様か。俺の知ってる【深化】はアーツが無いだけで他はそんなもんなのかもしれないな。
「やること無いし、一回ログアウトするわ」
「分かりました。私は少し残っています」
「ばーい」
「お疲れ様です」
駐屯地の自室に戻ってログアウト。
さてさて、負けた腹いせに別のゲームでストレス発散だ。何のゲームしようかなー。久しぶりに何かパズル系のを――
滅多に聞かない音、電話がかかってきた時の音が鳴っている。自宅の電話だ。一体誰が……?
「もしもし」
『もしもし、黒川さんのお宅で合っているでしょうか?』
「あっ、
『はい、こんにちは、
椙江
「どうしたの?」
『実は、今巷で噂のアレのことなんですが』
な、何だ? 今流行が来てるやつといえば……アイス乗せカレーか!
一見意味わからん組み合わせだけど温と冷のハーモニーがいいんよな。一回だけ食べたな。まさかそれに連れてけと? もうあんな長蛇の列に並ぶのは嫌なんだが。
「なるほどね」
『はい、どういった感じなのか教えて頂きたくて』
「こう、何と言うか絶妙な匙加減って感じかな」
『一体何がです?』
「それはもちろん二つの味が」
『なるほど? 味ですか……。深いですね』
「そう……だね?」
そうかな? そんな高尚な食べ物ではないと思うんだが。
『具体的にどのような感想が出てくるのですか?』
具体的な? もう言うことないぞ? 何か適当に……。
「えー、サウナに居ながら冷蔵庫にも居るような感覚かな……」
『それほど過酷で混沌としているんですか。やはりネットの情報通りなんですね』
「だね」
そんなに石橋を叩いて渡ろうとするぐらいなら渡らなければいいのに。早く切れば着いて行くのに誘われないのでは?
「じゃあそろそろ――」
『何の種族でやっていますか?』
「へ?」
『あ、マナー違反でしたか? すみません、疎くて』
何の話してる? アイス乗せカレーに種族なんて無いだろう。種族という単語が出てきて流行……AWOか!
「人間でやってるよ」
『おすすめとかあります?』
「うーん、ランダムが面白いって感じ」
『わかりました。ありがとうございます』
よかった。合ってそう。
『では、失礼します』
「あ、はい」
切られた。もうお悩みは解決したのか。もしかしたらネットの情報を見てソワソワして聞いたのかもな。だとするなら第三陣でやるのか。いや、それならもっと早く聞いてくるか。なら四か五ぐらいか。
そういえばどうして俺がプレイしてるって知ってたんだろう?
……ストーカー? いや、ありえない。電子機器とかならワンチャンあるけど、物理的に難しいだろう。器材も揃えるのに難航するだろうし。
ま、いっか。
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