105.5話 三人と副リーダー (ネア視点)

 



 チャットでマツとクロの死亡ログが流れた。一度戻った方がいい。




 死亡時刻に大きな差は無いから同じ場所で死んだ可能性が高い。少し前にマツがクロの方へ行くとあるので、ローテーション的に北西。

 念の為その辺りは避けた方が良さそう。






「……ただいま」


「ネアさん、お帰りなさい!」

「お帰りなさいでやんす」



 のんびり座っているから攻められたりはしていない様子。ガラス玉に点を入れながら作戦を練る。



 三人で防衛と攻撃をするのはかなりしんどい。ランキングは途中で見れないから極端な攻めにも出れない。ある程度点を稼ぎつつ守る必要がある。幸いにも防衛するのが木々の生い茂った山の山頂、空から来たりしなければ上からの攻撃でどうにでもなる。この中で一番強いのは私だけど、空中という行動範囲の広さではシロが上をいく。それなら……





 〈かたっ!? これ壊せないのか〉




 大きな声。この小屋の上から聞こえる。



「……敵」


「行きます!」

「出番でやんすね!」




 この小屋に裏口は無かった。そしてゲームのシステムで保護されていて壊せない。私も外に出る。



「ドラゴン!?」

「ドラゴンでやんすねー」


「……竜」



 〈少ないな。楽だからいっか!〉




 竜は初めて見た。有難い。これで戦力が増える。


 〈何だ? 人間が竜に勝てるとでも?〉


 近づいただけで煽ってくる。中身は子供で間違いない。



 軽く触れる。念の為蟻にしよう。サイズが小さい方が竜のスキルが使えても効果は少なくなる。


「……」



 〈な、なんじゃこりゃ!?〉



 そのまま踏み潰して終わり。竜の割にレベルが上がらなかったから単純に低レベルだったのかもしれない。


「うへー」

「何やったでやんす?」



「……蟻に変えて……踏み潰した」




「スキルじゃないんですか?」



「……ユニークスキルのパッシブ効果」


「ほえ? つまりアーツもあるんですか?」



「……そう」



 ひとまず竜は倒せたから、今度こそ作戦を……




「わ〜〜〜〖ウィンド〜〗」




 空から人が降ってきた。いい加減にして欲しい。



「ふ〜、危ない危ない〜」



 薄めの茶髪の長髪ウェーブの女性。ただ、魔女のようなとんがり帽子と藍色のワンピースを着ている。



「……風の刃よ〖ウィンドカッター〗」



「うわ〜、〖ウィンドカッタ〜〗」



 相殺された。…………無詠唱で魔法を使った。何かしらの抜け道かスキル。

 魔法戦は厳しいかもしれない。いや、アホの片割れが居れば大丈夫。



「……よろしく」


「あっしでやんすか!?」




 意図を掴めていないみたい。クロならすぐ伝わるのに。頭の回りが遅い。



「……魔法消して……私が接近して倒す」


「あ、そういうことでやんすか!」

「あのー、私の出番は……」


「……無い」


 いざとなれば私にも空中戦はできる。私の方が即応力もある。



「アッ、小屋に戻ってますね」


「ん」





「いくよ〜〖ザ・ゼロ〜〗」


「【絶魔】でやんす!」




 今っ!



「あれ〜? 〖ショ〜トワ〜プ〜〗」



「……」


「いや、違うでやんす! クールタイムが……」




 使えない。それならここぞという時に使わせた方がいい。



「……強いの消して」


「了解でやんす!」



 あの魔女は……いた。木のてっぺんに立っている。



「〖アイスニ〜ドル〜〗」



 氷の棘が飛んでくる。躱しきるのは不可能。



「火の壁よ〖ファイヤウォール〗」



 ギリギリ防げた。火の壁が消えていくのと同時に駆け出す。



「〖インパクト・ノンインパクト〗」



 効果の予想が全くつかない魔法、これは……


「【絶魔】でやんす!」



「あれ〜?」


 これはいい働き。



 立っている木の真下に着いた。




「輪廻ノ外法其の二――」


「〖テレポ〜テ〜ション〜〗」



 今のは転移?


「……居る?」


「いえ、消えたでやんす」


「そう……」




 小屋に戻って少し考える。


「お疲れ様です」

「どうするでやんすか?」



「…………」


 ショートワープとテレポーテーションでは距離が違うと考えられる。いや、さっきの魔女の立ち位置、目線、ワープは視線で行き先を決める可能性が高そう。テレポーテーションはどこでもの代わりに転移位置が固定、もしくはランダムというのが考えられる。


 ……少し楽観的な考察かもしれない。仮にまたあの魔女が来た時に私抜きで対処するのは厳しいはず。あの魔女は私やクロと同じ強さ。



 かと言って私だけであの詳細の分からない魔法を初見で捌くのも難しい。魔法消しは必要。



 となるとシロがヒットアンドアウェイでガラス玉を割りに行くのが一番効率的で安全。




「……シロ……北西、いや……」


 クロ達を倒した敵が北西から動かない確証は無い。


「……北と西以外……ガラス玉割って」




「プレイヤーは……?」


「無視」



「わかりました! 行ってきます!」


「いってらしゃいでやんすー」


「……気をつけて」




 もうすぐ日が暮れる。あと12時間近くある。今回は長丁場になりそう。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る