107話 指輪と衣装ガチャ

 


 寝落ち。それなりに夜行性の人間は通った道だろう。机なりベットなりで何かをしていて気づいたら寝ていることを言う。



 寝落ちした!


 リビングでゲームしてたら寝てた。ご飯食べて満足したからだろう。ご親切に肩に薄めの布をかけてくれていて有難い。風呂入ろ。




 現在既に9時半。イベントは終わっちゃっただろう。ログインや!





 とりあえず食堂に向かう。運営から来てるであろうメッセージも公式サイトも見ていない。是非とも本人たちから聞きたいからだ。




「おはよー」



「……おはよ」

「ご主人様! おはようございます」

「おはようですわ、ヨホホホ」

「おはようでやんす」



 キャラの安定しないアホは置いとこう。



「何位だった?」


 ネアに視線が集まる。


「……1位」



「おー、お疲れ様」


「ん」



 普通に凄いな。たった三人で1位をもぎ取ったのか。頭脳派のネアが頭を捻って何とかしてそうだ。もうリーダー代わっていいと思う。



「報酬も送られていますよ」



「確認するー」



 どれどれ………………。なるほど、リーダー宛てにもあるのか。順番に取り出してみよう。



「まずはこれ」



 赤い宝石が埋め込まれた指輪だ。全員分のがある。カッコイイ!



「機能はクランメンバーにちょっとバフがかかって、合言葉を言うと線が見えて居場所が分かるんだって」



 実際に使ってみないと分からんな。



「とりあえず左の人差し指につけてー」



「……」「はい!」「うわ、自動調節されるんでやんすね」「綺麗な宝石ね」



 合言葉は何でもいいけど……。カッコイイやつで、人前で言っても恥ずかしくないやつ。



「合言葉は、《同志と共に》でいこう」



 そう言うと全員の宝石が一瞬光った。これで登録的なのが済んだのか。



「《同志と共に》!」



 赤い線が宝石から出て、全員の宝石に繋がり合う。これが他の人に見えてなければ最高だが……食堂という場でやってるけど不思議がられてないしセーフでいいかな?



「……便利……対象が絞れたら……もっと良い」



「流石にそんな高性能ではないでしょ。一応クランのアイテムって扱いだし」



「……ん」



 いいからさっさと次を出せと言わんばかりの目で圧をかけられる。こわこわ。


「お次はこちら、ランダム衣装BOXー」



 これも全員分ある。仲良くやれという運営からのメッセージなのかもしれない。


「触って受け取れだって。順番にやってこう」


 最初は俺から。BOXだったものは煙を出して布に変わった。無駄に凝った演出だ。出てきたのは……



「メイド服?」



「……ふ」「うひゃひゃひゃ、ご主人様がメイドって……くふふは」「案外似合いそうでやんす」「キャハハハ! おもしっぷふふ! ダメ、おなかいたーい!」



 はっ倒してやろうか。全員笑いやがって。こちとら真顔やぞ。メイド服は帝国で一回着たけどもう二度と着ないから!



「ほら、次!」


「……私」


 ネアが触る。同じく煙の演出の後出てきたのは……



「……」



 スク水だ。ネアはどこがとは言わないが、少し平原の如く広々としているから似合うと思う。要するにひんぬーのネアにはよく似合うと思う!



「……成長期」


「すみません」



 定期的に心の声を読むのやめてー。



「ぶふふふ」「いやー、今日はいい天気でやんすねー」「――っくく」



 リューゲは素知らぬ顔で外を眺めているが、残り二人は笑ってる。片方は嘲笑うかのように、もう片方は必死に抑えて抑えきれずに。



「風の刃よ〖ウィンドカッター〗」



「危ないですね!」「くべ!?」



 マツは避けたが、シロは首が飛んだ。ポリゴンになっていく。リスポーン地点から帰ってくるのを待たなきゃな。



「では、次は私です」



 無視で良いのかよ。自業自得だけど不憫に思える。マツが触って煙から出たのは……



「サンタコスですか」



 サンタコス、補足すると布地の少ないやつ。脇が見えちゃうような肩と腕が丸出し、胸から膝上までしかない布地。これがネアで出ていれば子供のサンタの衣装と見れたが、マツだと完全に英智なやつになっちゃう。



「私のナイスバデーが生かされる素晴らしい衣装ですね」


「……ただの脂肪」


「持たざる者の自分を言い聞かせるための文句ですね。いやー、持っている者ですみませんねー」


「……ちっ」



 ホントに仲悪いな。すぐ煽り合う。リューゲは気まずくなってリスポーン地点に迎えに行ったぞ。こっそりと。


 睨み合ってるし、アホ二人は居ないから少しご飯を食べて待ってよう。







「ただいま帰りました! 誠に申し訳ございませんでした!」



 戻って来て早々、シロがネアに土下座をかましている。


「ん」



 マツと睨み合って忘れていたのか気にしていない様子だ。なら最初から殺すなよ。




「では、私が触らせていただきます!」



 シロが触って出てきたのは……


「嘘……」


「ぶふっ!」「……ッ!」「あひゃひゃ!」「っ! どんまいでやんす……っく!」



 思わず噴き出しが、これは仕方ない。まさかのスモックだ。それだけならまだしも黄色い帽子とランドセル付き。もはや幼稚園児にしたいのか、小学生にしたいのかよく分からない衣装だが、とにかく面白い。よく考えるとうちのクランの女性達、三人中二人がひんぬーだ。ナムナム。



「もうこれ以上は無いでしょうし、チャッチャッと貰うでやんす」



 勢いでさわるリューゲ。出てきたのは……



「なにこれ?」



 リューゲの素が見えちゃったような気もするが、スルーして、出てきたのは謎の布。半透明なドレス。何をさせたいのか理解不能だ。




「今度皆でコスプレして何かしよっか」



「……やだ」「いいですね」「いやでやんす!」「絶対嫌!」




 うちは多数決性じゃないので強制でーす。


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