101話 正義の剣と心配

 

 二人が小屋から出ていくので痛む右手を抑えつつ着いて行く。仇討ちしに来た割には律儀というか、アホというか……。騎士道とか言い出しそうな正々堂々とした振る舞い。



「ではいきます!」


「どこからでもどうぞ」



 玄関に腰をかけて眺めることにする。流石にマツが危なくなったら横槍を入れさせてもらうが。



「【正義の力】、【ダイナミックスラッシュ】です!」


「【本能覚醒】【鬼拳】」



 ギーーン!!



 騎士さんは剣、マツは拳でぶつけ合う。騎士なんだから盾を使って欲しかった。今まで見てきた人達みんな守りを捨てているから堅実な戦い方を見てみたかったのに。



「【連続斬り】!」

「【ラッシュ】」



 剣を側面から叩くことで逸らし、拳を剣の側面で逸らすといった攻防が繰り広げられている。一進一退の、終わりの見えない力のぶつけ合い。



「【鬼火】【狂戦士化】」



 マツの周りに青白い火がポンッと湧き、紅い角になり、白目になっている。



「フヒャヒャッ!」


「くっ!」



 マツが縦横無尽に動き始め、全方向からの立体的な攻撃をし、騎士さんが防戦一方になった。このままいけば、押し切れる。




「【正義執行】!」




 正義正義、しつこいな。でも騎士さんを黄金のオーラが包み、マツ。押し返し始めた。まずいか。手を貸そう。



「【スリップ】」



 ツルッ


「な!?」



「【鬼拳】っ!」





 ドゴーーーーーーン!!!!!!!!!!


「グハッ……」



 転んだ騎士さん目掛けて拳を全力で叩きつけ、クレーターができた。騎士さんはポリゴンになってないので倒せていないようだ。



「ハァハァ…………」


「私は、正義の剣、まだここで屈するわけには……!」




「正義、それは君にとってどんなものなんだい?」



 あれほどこだわると、気になってくる。



「正義は、私の目標であり、過程であり、手段であり、……全てです!」



「正義とは何だと思う?」



「自分の信念を貫き、大切なものを守る力です!」



 へえ、随分としっかりとした正義像を持っているんだな。


利己的エゴなんじゃない?」


「フフッ、面白いことを言いますね! エゴですよ! 人間なんてそんなものです!」



 いさぎよいことで。


「マツ、トドメよろしく」



「はい、そのつもりです」



 二人を残して先に小屋に戻る。マツも言いたいことがありそうだったし、ガールズトークに混ざるのは男失格だからな。










「ただいま帰ったでやんす!」



 ちょっとゴロゴロしてると、今度こそ帰ってきたようだ。



「ご飯食べきなー」



「そうさせて頂くでやんす!」




 そう言って点を入れてからリューゲは寝た。ログアウトすると本当に寝たようになるんだなー。人のログアウトに立ち会うのって初めてだけど、すごい早寝したみたいに見えて面白いな。




 ネアとシロは大丈夫だろうか。あー、チャット見ればいいのか。どれ……、



 シロ:{ちょっとしんどいです}



 ヤバかったらしい。それからチャットは無いが、大丈夫かな?

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