94話 誤魔化しと敬語


「坂本さーん」


「おー、上手くいったか?」



「実は鬼の親玉を倒したのはいいんですが、人間に下ってたまるかと他の皆さんが死にものぐるいで襲ってきたのでころ、倒しました」



「…………生き残りはいないんじゃな?」


「仕方なかったんです……」



 苦悩してるようだ。こういう人だから革命軍も着いていくのかもしれない。幕府軍も犠牲を少なく勝ちたいと思ってそうだ。


 優しい人間こそ苦労するのが世の摂理。損な性格だな。



「駐屯地に戻りましょう」


「そうじゃな。出航じゃー!」



 切り替え早。急にテンション上がるやん。この人意外と薄情なのかもなー。



「……折角だし……あらかじめ……地形見ときたい」


「確かに。下見は大事だしな、でも見つかったら面倒だぞ?」



 奉行所とか言ってた連中が坂本さんを追いかけてたし確実に警備が厳しくなってるはずだ。



「分かった。さっきのアジトに寄せるから二人でゆっくりしてきんさい」



「俺ら顔見られなかった?」


「……坂本に……夢中だった」


「なら大丈夫か」



 アホやん。奉行所の人達めっちゃアホやん。まあ、大丈夫なら観光したい。昔の日本に来たみたいで面白そうだし。



「潜水じゃ、いろは丸!」



 うおっ、揺れる揺れる。


「さぁ、中に入りんさい」




 船の部屋の中に入れば水が入ってこないのか。普通浸水してくるだろうに。


 でもこれなら大型船でも見つからずに行けるな。舟は小さいから良かったが、大型船だから普通に行ったらアジトがバレると思ってたけど、潜水機能があるなら無敵だな。













「夕方にはここに来んさい」


「了解」「……り」



 坂本さんと別れ二人で町に向かって歩き出す。分かりきっていたことだが、話題が無い。お互い無言で歩く。


 ネアが元々無口なのでそんなに気まずくは感じない。無言が心地良い関係と言う表現を聞いた事があるが、こんな感じなんだろうか。




「……ん」


 ネアが急に指さしたので見てみると見覚えのある石が。


「リスポーン地点更新しとくか」


「……ん」


 町の外の田舎の道端に地蔵が置いてあるように設置されていてスルーしかけてた。ナイスネア。



 他の三人も一回ここで更新させないとな。




 ――PIPI

『リスポーン地点が更新されました』




 これでよし。このゲーム内でゲームっぽいオブジェクトってこれぐらいしか無いよなー。こだわってるんかなー。




 二人とも更新が済んだのでのんびり田舎の道を再び歩き始める。




「そういえばネアって年下?」


「……なんで?」


「いや、敬語使った方がいいかなーって」


「……」


「年上には敬語使う派だから」


「……17」


「俺は18だから俺の方が上か」


「……高3」


「同じだわ」




 同い年か。俺以外にも勉強してない奴がいて安心だ。自分で思ってて悲しくなるな……。




「同い年なら敬語は使わんからー」


「……お好きに」



 ネアは誰にも敬語使わなそう。芯の通った人ってかっこいいと思いマッスル。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る