91話 今更と煽り


「警備薄いな」


 てっきり根城だと思ってたけど、ハズレだったかな?


「暗いなー、鬼って夜目もきくのかー」



 洞窟探検なんて初めてだ。おっ、奥から騒ぎ声が聞こえる。鬼がいるといいが……



「ガハハハハッ!!!!!!!!!!」


 ――ガヤガヤ ガヤガヤ ガヤガヤ ガヤガヤ



 宴会をしてるのか。どうしよ。暗殺スタイルでもいいけど、脳筋の場合、真正面から行った方がいいからな。



 えーい、ままよ!



「たのもー!!!!」



 静まり返った。しくじった? 空気読まない奴になっちゃった?



「人間がなんの用だ?」



 ギョロっという擬音が聞こえてきそうな睨み。迫力満点だ。ボスっぽいやつは赤い2本の角を生やした黒髪のおっさんだ。オーガと違って鬼は人間に姿が近いのか。




 とりあえず外套もお面もしてないし、RP無しで交渉だな。坂本さんの前ではやらないけど。ここで全員殺せば問題無い。

 坂本さん曰く皆殺しはしないらしいけど、ここにいるのはごく一部だろうし大丈夫。



 最近俺の中で黒幕RPの必要性に疑問が生じてるんだよなー。黒幕っぽいこと全然できてないからなー。一旦そのことは置いとこう。



「知り合いに鬼が居るから、俺が勝ったらそいつに従ってもらう!」


「…………俺様とお前の一騎打ちか?」


「そうだ」


「いいぜ。面白い」


「約束は守れよ?」


「当たり前だ。お前らもいいな?」



「「「「「「おお!!!!!!」」」」」」



 とは言ったものの、勝てるか微妙だ。とんでもないぐらいの“強さ”を感じるから。




 でも、皇帝やニュクスみたいな得体の知れない怖さは無い。隔絶した実力差ではないはず。





 外野が荷物を片して端に寄せているので、今のうちに色々確認。


 メッセージっと、あれ? 運営からのがある。そこそこ前のやつだな。今朝見た時はスルーしてたのか。


 既読機能が無いのはあれか、運営のお歳がいってて利便性をご存知ないのかな?

  まあ、削除機能も無いのと、以前追加要素と言ってプレイヤー周りの機能を増やしてたこともかんがみて、おそらく、世界やその他を中心的に作って、ゲームっぽさが後回しになっちゃったんだろう。……そんなこと今はいいや。確認が先。




 どれどれ………………あっ。




 イベント報酬受け取り忘れとった。ちゃんと確認しなきゃな。うわ、結構あるなー。


 総合1位、戦闘2位、シナリオ1位、探索1位で、ゲルビュダットの実一個、スキルスクロール二枚、スキル書四つ、ノーマルポーション四十本だ。



「何をしている?」


「準備中だから、ちょっと待って」


「よかろう。どれだけ準備したところで俺様には勝てんがな」



 うるさいやい。やってみな分からんじゃろがい。


 全部ストレージに入ったらしいのでまずゲルビュダットの実を取り出し、食べる。



 ハムッ シャリシャリ


 味はしない。


『ユニークスキル:【リンク】を獲得しました』『ゲルビュダットの権限を確認。ユニークスキル:【リンク】が特殊解放されました』



【スリップ】大先生の時の実か。道理で点滅して見覚えがあると思ったわけだ。


 次はスキルスクロールじゃい!


『スキル:【光剣の舞】を獲得しました』



 ……これ団長さんが使ってたスキルじゃね? 後でまとめて確認するか。そしてもう一つ。



『スキル:【飛翔】を獲得しました』『スキル:【浮遊】を確認』『統合されます』『【飛翔】のレベルが上がりました』


 ほほう。


 お次はスキル書四つ。



『スキル:【火魔法】を獲得しました』『重複を確認』『【火魔法】のレベルが上がりました』


『スキル:【歩術】を獲得しました』『重複を確認』『【歩術】のレベルが上がりました』『【歩術】のレベルは上限です』


『スキル:【走術】を獲得しました』


『スキル:【毒耐性】を獲得しました』



 二つも被るとかどんな確率だよ。運悪いな。上限いったのはいいことだけれども。



「ステータスオープン」




プレイヤーネーム:クロ

種族:人間?(深度Ⅱ)

レベル:60

状態:狂乱

特性:変人・狂人(超)

HP:36000

MP: 1200


スキル

U:深化・スリップ・リンク


R:成長促進6・支配6・混沌魔術4・魔眼3・宝探し2・飛翔2・恒常的狂気・剣神の加護・超腹筋・光剣の舞


N:隠密10・歩術10・詐術6・火魔法6・体捌き6・短剣術4・潜伏4・睡眠耐性3・思考加速2・魔力感知1・大剣術1・走術1・毒耐性1




 うわ、かなり整理されてる。バージョンアップでステータス画面の整理とかがあったのか。スキルがランク順になるのはありがたい。


 より詳しく見てみよう。鬼の大将さんは酒飲んで待ってるし、落ち着いてじっくりな。





 スキル

【リンク】ランク:ユニーク

 君は一人ではない。背負うのなら、折れることは許されない。




 スキル

【飛翔】ランク:レア レベル:2

 空中をレベルに応じたスピードで飛び回れる。

 細かい操作もレベルで扱いやすくなる。

 効果時間:スキルレベル×60秒

 CTクールタイム:2分


 スキル

【光剣の舞】ランク:レア

 七本の光の剣を自由自在に操る。斬ったり防いだりした後消える。

 CTクールタイム:10分




 スキル

【歩術】ランク:ノーマル レベル:10

 歩き上手になる。歩くことに補正が入る。

アーツ:踏み込み・バックステップ・サイドステップ・忍び足・壁歩き




 スキル

【火魔法】ランク:ノーマル レベル:6

 火を操る魔法。


 〖使用可能な魔法〗

 ・プチファイヤ

 ・ファイヤ

 ・ファイヤボール

 ・ファイヤウェーブ

 ・プチファイヤボム

 ・ファイヤランス

 魔法

 〖ファイヤランス〗

 貫通力の高い火の槍を飛ばす。

 詠唱:「火の槍よ」

 消費MP:15




 スキル

【走術】ランク:ノーマル レベル:1

 走り上手になる。走ることに補正がかかる。

 アーツ:ダッシュ


 アーツ

【ダッシュ】

 高速で直進する。

 CT:120秒




 スキル

【毒耐性】ランク:ノーマル レベル:1

 状態異常:毒にかかりにくくなる。




 うん、【リンク】に関しては使ってみないと分からないが、他はかなり良い。歩術はアーツ追加されてないから打ち止めっぽいけど。




「リンク」


 …………何も起きない。というか発動されてない? まったく、君にはガッカリだよ!



 準備も整ったし、戦うか。



「やろうか」


「終わったか? ここからは殺し合いだ。逃げるなら今の内だぜ?」


「ハッ、舐めんなや。あんたこそ仲間に遺言言っとかなくていいのか?」


「あ゛?」


 短気乙!



「その顔、グチャグチャにしてやるよ!」


「鬼さん、こちら♪ 手の鳴る方へ♪」



 煽り耐性無さすぎ。そんなんじゃ現代社会ではやっていけんぞ、知らんけど。


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