90話 いろは丸と鬼ヶ島

 

 童子切安綱といえば酒呑童子の首を切った太刀で有名だ。普通そういう国宝は幕府陣営にありそうなものだが。


 盗人とか言ってたから盗んだんだろうか。国相手に盗みができるといえば、あの師匠なんだろうけど、流石にこんなとこまで来ないだろう。


 まさかな。



「…………待って、変」


「ん?」


 変な所なんて無いと思うけど?


「……革命軍……鬼に敵対してない」


「ほう?」



 そうだったのか。なら何故鬼討伐の為の太刀を?



「幕府相手に協力する条件に入れられてのぉ、まぁ、鬼は強者に従うらしいし、皆殺しとかいうわけではないらしいから協力することにしたんじゃ」


「……そう…………」



 鬼が強者に従うって、マツもつまりそういうことだったのか? いや、マツは俺が来る前からメイド服だったから元々従う側がよかったのかな?




「では、行くぞ!」


「どこに?」


「勿論、鬼の本拠地じゃ!」


 うそーん、これがあるからって油断しすぎじゃない? 流石に無謀じゃない?




「行くぞ!」


「あっ、ちょっと」

「……」


 表通りに行っちゃったよ。鳥頭かな?


「ハァ、俺らも行くかー」


「ん」


 表通りを全力疾走。目立ちまくりだ。さっきまでの慎重さは微塵も感じられない、



「ん? あ! お主、坂本竜馬か! 待て!」


「急ぐぞ、奉行所の連中に見つかったみてえじゃ!」



 あんたのせいだろ! てかあんた顔バレしてんのかよ。隠す努力をしろよ!



「もうすぐじゃ。海岸に着いたら全力で飛び込みんさい」



 海に飛び込んでどうしろと。それしか選択肢は無さそうだから仕方ないか。少しずつ距離が詰まってきてるし。


「いろは丸!」


 誰だよ。叫びながら海に飛び込んでる。それに続いて俺達も……


「よっ」「……ふんっ」



 海に飛び込む。足着くかな?



 シュポー



 船? うん、船だ。俺達の下から船が現れて助かった。



 ただ、海から浮かび上がったのが問題だ。見た目は船なのに、機能的には潜水艦。もう何でもありだな。



「よし、このまま鬼ヶ島に特攻じゃ!」


 鬼ヶ島って名前なのかよ。そのまんまだな。しかも特攻って言ってるし。死なないように頑張ろ。



「……クロ……刀使える?」


「え? まぁ、たぶん」



 普段使ってるのはナイフだけど、武器のリーチが気になるほどの技術も、経験も無いから大丈夫だろう。



「……なら……私が雑魚をやる」


「親玉行けと?」


「……そう」



 理にはかなってるが、ネアと坂本さんだけで鬼の対処できるのか?






「着いたぞ! 特攻じゃー!」


 坂本さん、突っ込んでった。


「……任せた」


 ネアも突っ込んでった。



 いや、親玉の居場所なんて知らないんだけど。



「しょうがねぇなー」


 俺も鬼ヶ島に乗り込む。とりあえず正面にある巨大かつ不気味な山に入るか。





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