82話 すり合わせと地理
「一つよいか?」
「ん?」
魔王さんが改めて真剣な顔を作り直した。
「その小娘を育ててから行かせた方が良い。幸いフニトユチが召喚魔術を得意としているから、自衛ができる程度までこちらで育てよう」
「待ってほしい。そのフニ……さんはボクらと行くから方向が違うと思うんだけど?」
どういうつもりだ?
「? あぁ、場所を言っていなかったか。今いるここは魔大陸の中央付近の魔王城なのは知っているな?」
「そこから説明頼むよ」
現在地なんて知るわけないだろ。こちとら状況に追いつけてない部分もあるんだから。
「最初から全て説明しよう。まず、ここは魔大陸の中央付近の魔王城であり、西に進むと海がある」
はいはい。
「海を渡ると三本列島にある
日本みたいだな。……ていうか、
皇国ってのは天皇が治めてるってことかな?
「そこから北に儂の言った■■■■■が居る。いや、“ある”と言った方が正しいかもな」
ほほう?
「一方、三本列島から更に東に海を渡るとパライソ大陸があり、その最北にレフト連合国がある」
へ〜、パライソ大陸って名前なんだ。
「レフトに行くには竜の渓谷を越えて行かねばならない。運良くそこまで辿り着けたとしても、竜相手に力の無い子供が生き残るなど不可能だ」
子供に限らず力が無ければ竜には勝てへんやろ、っていうツッコミは無しかな。真剣な話に水を差すわけにもいかない。
「今言った場所を効率的に回るには三本列島で二手に別れるのが一番だ。そこで召喚魔術で小娘を喚べば良い。そこまではここで訓練させよう」
「くんれん、です?」
ウトウトしてたようだけど戻ってきたらしい。
先生! こんな小さな子供に訓練を強要するのは良くないと思います!
「強くなりたくないか?」
「なりたい、です」
魔王が力が欲しいか的なこと言うと、完全に悪の道に走らせようとしてるシチュエーションにしか見えんのよ。
「だそうだが?」
「分かった。しばらく預けるよ。その代わり、無理はさせないでよ」
「加減は娘で理解している」
育児経験があると違うのか。…………まて、その娘は魔族やろ? 魔族と同じ匙加減でやったりしないよな?
まさかな。魔王がそんなアホらしいミスするわけないよな。
「とりあえず明日の朝出立するから、泊まる部屋が欲しいな」
「用意する」
宿無し回避や!
「……この居眠りメイド……殴っていい?」
「いいよ、存分に」
「よく考えますと、遠出なんて初めてですね」
「全く、仕事が多いな」
「フェッフェッフェッフェッ」
「ふあぁ、もう眠い、です」
月明かりが照らす中、会議室が混沌としてきた。
あの赤い月が本当に月かは知らないが。
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