81話裏 親子雑談と父親絶対主義 (スセソル視点)

 

「お父様、何故あのような提案を?」


「あの者が勇者とは違う形で希望たり得るからだ、可愛い可愛い儂のソルよ」


「そうですか……」



 勇者と違う希望? 意味が分かりません。お父様は最強なんですから、頼る必要なんて無いのに。


此度こたびは一体どのような敵を倒すので?」


「儂には手に負えんよ、だからこそのあの者だ」



 急に怖い顔になりました。それだけ強い敵なんでしょうか?



「不思議そうな顔をしているが、あの者にはあれと同じような存在の可能性が高い」


「あれとは何なんですか?」


「言っても聞き取れないからあれと言ってるだけだ。会議でも聞き取れなかった時があったろう? 」


「ありましたね」


「あれは自分の目で見ないと認識出来ない、そういう風になっているんだ」



 勉学には自信がありますが、どういった仕組みなんでしょうか?



「あと気になったのですが、何故あの仮面の者に、会ったばかりですのにそこまで執着なさるのですか?」


「執着か……確かにそうかもしれないな。あの者は、フニトユチが喚んだ中に居たらしいんだが、あれと似た感覚を覚えて術中に弾き出したそうだ」


「フニトユチ様もあれとやらを見たことがあるので?」


「…………そうだ。詳しくはいずれ話す」



 がありましたね。言いにくいことでもあるのでしょうか?



「……魔王、来て」



 人間の少女が呼びに来たようですが、お父様に対する態度としてなっていませんね。



「む、分かった。行こう」


「わたくしも行きます」


「……勝手にして」



 もう少し丁寧に話した方が良い心象を得られますのに……







「…………という訳で保留ってことでよろしく」


「なるほど。フニトユチ」


「フェッフェッ、こちらに」


「こやつらの案内をせよ」


「お任せください、フェッフェッフェッ」



 フニトユチ様は見たことがあるようですし、適任でしょうが、四天王がお二人も抜ける状態になるのですか。防衛面が少し心配です。


 お父様がいらっしゃるので万が一は起こらないとは思いますが……


 しかし、あれとやらは見たことがあれば認識できるそうですし、着いて行きたいですね。お父様にそこまで言わせる敵、興味があります。



「お父様、わたくしも行きます」


「ダメだ」


「……何故でしょうか?」


「危険すぎるからだ」


 それ程なのでしょうか?



「君は強いのかな?」

 


 この人間はお父様が仰っていた者ですね。呼びに来た少女とは違い、礼節がなっているので好感が持てます。



「はい。お父様程ではありませんが」


「なら協力して欲しいな」


 良い助け舟です。


「待て、娘を危険な場所に送り出す親が何処にいる?」


 手強いですね。


「まぁまぁ、落ち着きなよ、魔王さん。ボクが協力して欲しいのは、タラッタちゃんの護衛だよ」


 はい?


「あ、そちらにはあまり興味は……」

「それならいいぞ」



 お父様!?



「他に一緒に行かせる人達が少し頼りないからお願いしたいなーって」


「お断りします。わたくしはお父様の言う“あれ”に興味があるだけで、人間の子守りをするなどありえません。そもそも案内の要求もなさっていますので、対等な協力関係ではありません」



 少し強欲というものです。かの偉大な初代様も仰っていました。“人間は相手を騙してでも優位に立ちたがる愚かな生き物だ”と、“人間の欲に限りは無い。そして人間は自ら破滅に歩んでいく”とも。


 やはりご先祖様は偉大でした。その通りでした。わたくしもいつかプロバタ家に恥じない君主になりたいものです。



「ソル、行ってくれ」

「お父様がそうおっしゃるのであれば」



 お父様がそう仰るからには、きっと“トバタの井戸”より深い理由があるのでしょう。



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