四章 黒幕(仮)結託

68話 短い一人旅と合流


 ログイン。今日でサービス始まって10日目だ。もう1ヶ月くらい経ったと思うほど濃密だったなー。



「にしても遠いなー」



 今、俺は一人ぼっちだ。前までは、というか数日前は一人だったが、ここ最近メロスとかマリーさん達と行動してたせいで違和感がある。


 メロス……どこ行ったんだろ?


「野生に還ったのかなー」



 昨日謎の空間から出たら、地面に「こっち」とだけ地面に書かれていて、その方向にえぐるような破壊痕が残ってたんだよなー。おかげで真っ直ぐ進めてるからいいんだけど。



「そういえば、このゲーム、日本語で共通になってんのかな?」



 日本の企業が発売してたけど、海外の人達も遊んでる可能性は十二分にある。気になってきたな。また今度調べよ。……確実に忘れるやつだ、これ。



 ずっと歩いてるだけだと暇だし、ネアに電話しよう。電話じゃなくてコールだけど、電話の方がしっくりくるんよなー。何でも英語にすれば良い訳じゃないんだぞ、運営!




 ――rururu rururu rururu



『ん』


「しもしも」


『ん』



 “ん”BOTかな?



「今どこ?」


『……東にのろのろ』


「こっちに近づいてくれてんのか。ありがと」


『ん』


「なあ、このゲームって外国語対応してる?」


『……自動翻訳』


「リアルタイムで?」


『そう』



 なら完全に気づかないのか。もしかしたらネアも、外国人の可能性が出てくるわけだ。



『……私は日本人』


「俺もー」


 地味に考えが見透かされてたな。おそろしく速い読心、俺でなきゃ見逃しty……おっと、これ以上はまずい。



『……居た』


「何が?」


『……クロ』


「え?」



 つまり俺が見える範囲にいると?



『……迎えに行く』


「あ、ども」



 ――purun♪



 正直迎えに来てもらっても結局歩くんだからコールごしか直接話すかの違いしかないと思うんだが。



 バサッ



 上から敵!?


 腰からお馴染み、キャシーちゃんのナイフ、略してキャイフを抜く。



「……敵じゃない」



 上からネアが降ってきた。上と言っても鳥の上からだが。テイマーだったのか? いや、昨日見た蘇生のスキルか?



「おはよう」

「ん」


「その鳥は?」


「……ペット?」


「いや、俺に聞かれても」



 随分早く会えたのは鳥のおかげか。俺も後から考えたら分かったんだが、メロスが巨大化して俺を乗せればかなり速く進めたんだよな。今はどっか行ったからできんけど。



「……後ろ」


「分かった」



 そこそこデカい鷹のような鳥の上の、ネアの後ろに乗る。サイズ的には軽自動車に近い。


「……バイクみたい」


「確かに! でもあれってヘルメット無いといかんのでは? いや、二人乗りもダメなんだっけ?」


「……一般50超、経験1年以上」


「ほほう?」



 51CC以上ので経験が1年か。年齢的には免許取れるし、受験が終わったら取ろうかなー。



「……高速125超、20歳以上、経験3年以上」


「なるほど」


「……ヘルメット絶対……定員2のだけ」



 さてはこいつ、免許持ってるな? 或いはバイク好きか。


 そんな雑談を挟みつつも山脈を空から攻略していく。敵は避けるので余裕もある。



「そういや、元々手こずってるって話だったよな?」


「……越えるのは可能」


「ならなんで?」


「……欲しい」



 世界がですか!?


 冗談はともかく、この際付き合った方がよさげだろうな。部下との親睦を深めるとか大事だろうし。



「……部下じゃない」


「!?」



 え、読心のスキル、本当に持ってんのか? 俺はネアの背中にいるから表情からじゃないし、というかお面もしてるから100%ないだろう。やっぱりスキルか?

 


「何で分かったんだ?」


「……なんとなく」


 ……サトリもゲームをする時代になったのか。サトリなら日本人と言っても間違ってはいない。



「それで、何の話だっけ?」


「……スフィンクス……欲しい」


「スフィンクス!?」


 何で山におるんや!?

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