63話裏 《水鏡の間》(ネア視点)


 《水鏡みずかがみの間》


 ようやく見つけた。池の中にあるとは。


 ゴゴゴゴッ


 近づくと扉が開いた。



「……行って」

「GyaO」



 村で手に入ったゾンビで先に行かせる。



「……何も起きない?」



 プレイヤー限定? 仕方ないので私も入る。


『挑戦者の個人データを確認』『顕現を開始します』『個体名:ネアの顕現に成功しました』『“今の己との対峙”を開始します』



 中は洞窟のような岩むき出しの部屋。そして目の前に私が現れる。


 …………少し待ってみたけど、何もしてこない。奥にある扉の先に要石があるんだろうけど、もしかしたら戦わずに行けるかもしれない。



「……風の槍よ〖ウィンドランス〗」

「風の槍よ〖ウィンドランス〗



 これで壊れないなら今の私にはこの扉は壊せない。それにしても、この偽私は私の真似をしているみたい。普通は今の魔法の無駄打ちはしないはず。


「……」



 右手でグッドしてひっくり返したら、向こうは左手で私と同じことをした。つまり部屋の名前の“鏡”は真似じゃなくて虚像として私を映し出しているということ。


 幸いこちらが何もしなければ向こうも何もしないので、じっくり考えよう。


 今回はあくまでもゲームのイベント、絶対突破できないなんてことは無いはず。



「……あいうえお」



 言葉は発しない? いや、魔法は使っていたから、スキル等は使えるはず。



 アナウンスでは“今の己との対峙”とあった。今というのが入った瞬間のことを指すなら成長すれば勝てる? 成長の仕方は? ……無い。


 他は……あっ。



「……あいつ……攻撃」

「GyaO」


 ゾンビは私しか連れてない。思ったより簡単だった。


「……何してる?」

「GyaO?」



 ゾンビが私と偽私の間でウロウロしている。


「……」


 私のユニークスキルの効果の一つにそういうのあった。あの効果はパッシブだったからどうしようもない。私の命令と向こうの命令で変な挙動をしてるということ。


 でも偽私は私と同じ命令を出しているはず。なら相打ちすれば要石は壊せる。扉も閉まってるし相打ちしかないなら仕方ない。



「……全員集合」











 ギュウギュウ詰め。外からゾンビが来たら扉も開いたけど、その隙に私が出ると偽私も消えるのでやはり相打ちしかないみたい。



 先にクロにメッセージを送っておこう。できればクロと居たかったけど、シナリオを進めないといけないし、仕方ない。



 {クリア、死ぬ}


 {おつかれ〜}


 {ん}



 彼は私と同じ、何かに絶望して、諦めて、割り切った、そんな人間。恋心なんて甘い感情は持ち合わせていないけど、私は…………




「……【チェンジ】……10秒後自爆」

「【チェンジ】」


 自分の凹凸の少ない胸に手を当て、心臓と、近くにいるゾンビから貰った目玉を入れ替える。


 視界が暗転する。あとは偽私が死んで、開いた扉の中の要石を巻き込んで、ゾンビたちが自爆するだけ。


 ……ここの他の攻略法が気になってきた。


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