63話 《黄泉の間》




 ゴゴゴゴッ



 《黄泉よみの間》か。今度は無理ゲーじゃないといいんだが。



『挑戦者の記録を確認』『顕現を開始します』『個体名:エルンスト・ハイム・サンセルの顕現に成功しました』『“強大な敵の再臨”を開始します』



 紺色の髪に瞳、そしてムカつくイケメンフェイス。間違いない、王国の近衛騎士団の団長さんだ。こいつを倒さなきゃいけないのかよ。【深化】無しで。



「【竜力りゅうりき】【剛力】、【剣の頂き】、【人間の臨界点】、【光剣の舞】、【輝閃剣きせんけん】」


「マジかよ……【バックステップ】、【サイドステップ】、【スリップ】」



 まずいまずいまずいまずいまずい。初っ端からバフてんこ盛りの全開じゃねーか。


 ツルッ



 転ばせはしたがすぐ立て直された。うん、もっと盛大に転ぶスキルのはずなんだけどな?



「【輝閃剣】」


「〖chaotic arms〗」



 これで残り3発だ。何とかヤツの周りに展開して攻撃キャンセルして、浮いていた7本の光の剣も消えた。やばい、足踏ん張ってる。動こうとしてるのか。


「【サイドステップ】」



 速いっ!


 急いで今剣いまのつるぎを抜いてパリィする。確かスキルで防御時不壊があったはず。



「【竜鱗りゅうりん】【竜のオーラ】」



 団長さんの体に鱗がでて、青いオーラがバチバチとほとばしっている。キャシーちゃんのナイフであの鱗は難しそうだ。かといって他の武器の特攻は人間だし効かない。



「【一閃】」


「くっ、【バックステップ】」



 考える余裕は無いな。【思考加速】のレベルが足りないか。仕方ない。一か八か、ワンチャンにかける。今剣をしまい、ストレージからそれを取り出す。



「頼んだぞ、グラム!」



 向こうが竜の名のつくスキルを使うなら、こっちは竜殺しでやってやんよ!



「ハッ!」



 大剣というだけあって重いので、両手で重力に任せて叩き斬る。……が、


「グハッ」



 あっさりと受け流されて空いてる左手で腹あたりに重いパンチが刺さる。


 もし特攻が効いたとしても、技術の差がありすぎるな。先に剣を手放させなきゃ勝てないか。こっちからの攻撃が当たるとは思えないので、カウンターメインでいった方が良さそうだ。



  「フゥーーーー、集中!」



「【飛影斬】」



 飛ぶ斬撃、狙いは首だ。前見たから余裕を持って弾く。


 下段、軽く弾く。突き、大剣の広い幅を使って防ぐ。右、左、縦横無尽な斬撃が襲いかかる。


「【バックステップ】」



 大剣を盾代わりに後退することで致命傷を避けていく。かすり傷自体は多いからHPがかなり削れてそうだ。



「【輝閃剣】」



 今だっ!


 

「【サイドステップ】!!!!!!!!」



 光速の斬撃をギリギリ避け、振り切られた状態の剣に下から大剣を振り上げてぶつける。



 パキンッ



 団長さんの剣が砕け散る。勝機ッ!



「【竜拳りゅうけん】」


「ガッ!?」


 ドゴンッ!


 ……壁まで吹っ飛ばされた。なんで剣が無くなったらこぶしで来るんだ。読みが“けん”だからっておちょくってんのかよ。


 死ぬほど全身が痛い。HPは……520だ。最大HPが3万近くあったから1割は切ってる。これは

 いけそうだな。



「【怒りの餓狼】」



 うん? 状態異常になるはずなんだけど、何も起きない。ま、いっか! まずは団長さんを倒してからだ。



「〖chaotic arms〗」



 腕を団長さんの周囲に発生させる。すごい勢いでパンチして相殺しているが、


「【スリップ】」


 ツルッ


 上手くバランスを崩せた。転びながら腕の対処をしてるところに、思いっきり大剣を振り下ろす。


「【竜鱗】」


 両手で交差して防ごうとしていたが、ピーマンでも切るかのよう感触で胴体が真っ二つになった。竜系のスキルが竜として認識されたからか、超特攻が効いたっぽいな。


 ポリゴンになっていく。死体は残らないのか。まあ、1回死んでるから戦利品とかがないように

 


『レベルが上がりました』『レベルが上がりました』『【混沌魔術】のレベルが上がりました』『【潜伏】のレベルが上がりました』『【体捌き】のレベルが上がりました』『【短剣術】のレベルが上がりました』『【魔眼】のレベルが上がりました』『【魔眼】のレベルが上がりました』『【思考加速】のレベルが上がりました』『【思考加速】のレベルが上がりました』『スキル:【大剣術】を獲得しました』『スキル:【超腹筋】を獲得しました』



 うわ……うるっさいな。確認するか。

「ステータスオープン」



 プレイヤーネーム:クロ

 種族:人間?(深度Ⅱ)

 レベル:59

 状態:狂乱

 特性:変人・狂人(超)

 HP:523

 MP:268

 スキル:(深化)・隠密10・歩術9・成長促進6・スリップ・支配6・混沌魔術4・詐術6・恒常的狂気・火魔法5・睡眠耐性3・潜伏4・宝探し2・体捌き6・短剣術4・魔眼3・剣神の加護・思考加速2・浮遊2・魔力感知1・大剣術1・超腹筋





 スキル

【混沌魔術】ランク:レア レベル:4

 混沌を振り撒く禁忌の魔術。その力が真に君のものかよく考えるべきだ。


 〖使用可能な魔術〗

 ・chaotic arms

 ・chaotic legs

 ・chaotic head

 ・chaotic hands(New!)


 魔術

 〖chaotic hands〗

 混沌より出づる異形の手を十個操る。

 消費MP:100




 スキル

【大剣術】ランク:ノーマル レベル:1

 大剣の扱いが上手になる。

 アーツ:パワースラッシュ


 アーツ

【パワースラッシュ】

 大振りな斬撃を放つ。

 CT:80秒




 スキル

【超腹筋】ランク:レア

 腹部だけに攻撃を食らう際、ドンピシャで発動すると攻撃を弾く。

 CT:24時間




 確かに腕に手はついてないな。基本ぶん回すだけだから意識してなかった。最後のは……明らかにネタスキルだ。難易度は高いけど、上手く使えれば強そう。



 いや、わざわざ“だけに”と書いてあるってことは少しでも他の部分も触れたら使えないのか。うん、完全にネタだな。色々レベルは上がったけど、詳細に変化があったのは【混沌魔術】だけか。魔眼の機能とかは増えないとはな。


 お? メッセージが来てる。


 {クリア、死ぬ}


 シロと同じような感じになったのか。十分ありがてえ。


 {おつかれ〜}


 {ん}



 さて、俺もさっさと壊しちゃおう。





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