60話裏 《障壁の間》(シロ視点)
「……部屋の中の
相変わらず要点しか言わないから分かりづらいけど、部屋の中にある要石とやらを壊せばいいようね。
「はい!」
この人、無言の圧が怖いから一旦従順にしておいてるけど、それも見透かさてそうで怖い。
ゴゴゴゴッ
「……西に行く……ここ……任せた」
「あ、はい」
他にもあるのかな。入ろうか。《障壁の間》と書いてあるので、多分壁が迫ってくる系のやつだと思うし、問題無いと思う。
『挑戦者の記録を確認』『顕現を開始します』『個体名:ケイスの顕現に成功しました』『“敗北の塗り替え”を開始します』
嘘でしょ……あいつは……
「どういうこと?」
目の前に現れたのは因縁と言っても差し支えないほど私を殺したライオンの獣人。勝てるかな? 要石とやらは奥の扉が怪しいから上手く避けて壊して逃げたいなー。
「【縮地】【パワーインパクト】」
そうもいかないよねー。
「血よ波打て〖ブラッドウェーブ〗!」
【血液操作】で手持ちのパックからの血を取り出して、盾を作ってパンチを防ぎつつ魔法で迎撃する。
初撃は防げるんだけど、ここからなんだよねー。
「【獣の底力】【ラッシュ】」
野太い声ね。聞き飽きたわ。……とは言っても本家より弱ってるとかは無いせいで盾に棘をつけてもかすり傷1つ付かない。
いっそ逃げた方が良いかもしれない。あのおっかない人も西に向かうって言ってどっか行ったし。
「戦略的撤退だから! いつかリベンジするから!」
逃げ……れなかった。扉が閉まってる。いつの間に閉まったんだー。これは完全に戦わなきゃいけないじゃない!
「【本能覚醒】【
あれ? それは私も知らないんだけど。もしかして本気モード?
「グアッ!?」
……殴られた? 多分腹パン? 見えなかった。HPは……20ね。回復しなきゃ。パックの血を飲んで、
「【活性化】、【食いしばり】」
よし、これであと1発は耐えられる。相打ち覚悟でいくしかない。
「アンタが私をほっといてどっか行ったお陰で手に入れれた装備の力、見せてあげる!」
ッッッッッッッッッ!
腹貫通はしんどい。痛みでどうにかなりそう。一応アンデッドの部類なんだから痛覚無くして欲しかったわ。でも、腕は掴んだ。完璧に捉えた。これで……
「お、わりよ……【
視界がぼやけてきて確認はしてないけど、急いで奥の扉の方に進む。
ガガガガッ
室内で振り回せなくて使えなかった大鎌を取り出して全力で投げる。
パキッ
壊れたみたいね。死ぬ前に連絡をしなきゃ……
――rururu rururu rururu
メッセージを入力する余裕は無い。
『……なに?』
「何とか、壊せました」
『そう』
「もうすぐ死にます」
『……おつかれ』
フフッ、もう少し感情込めて欲しかったな……
――purun♪
視界が暗転する。多分誰よりもこの感覚を味わったんだろうなー。
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