49話 ママ呼びとパチモン
「えーと、マ、お母さんにはわたしから言っておくので、どうか剣を収めてください」
ママ呼びか……かわいいな。
「引き下がるのならオレは構わん」
「ふん! 今回はこれで勘弁してあげる!」
「お母さん!!」
ニュクスが膨れっ面でそっぽを向きながらすっと消えた。これじゃあ中身まで親子逆なんだよな〜。
「とりあえずその傷治しますね」
へーメラーが手をかざすと穴が開いている腹が塞がっていく。神能か? 便利だな。
「ちゃんと母親の面倒を見るのだぞ」
「はい、ご迷惑を掛けしました」
頭を下げ、消えた。
「さて、体を返そうと思うが、ついでにオレの加護もプレゼントしてやろう」
『肉体の操作権が返還されました』『レベルが上がりました』『レベルが上がりました』『レベルが上がりました』『レベルが上がりました』『スキル:【剣神の加護】を獲得しました』
大盤振る舞いだな。
「あー、あーーーー、よし戻ってる」
〈お疲れ様〉
「途中から空気になってたな」
〈うるさいわね!〉
メロスは無事だったようだ。巻き込まれてコロッと死んでるかもと思ってたんだが。
「メロスがここまで全速力で来たのはあのニュクスが原因ってことでいいんだよな?」
〈そうよ。神が来る気配を感じたから急いだの〉
「じゃあ、一旦サキュバスさんの方見に行くか」
〈待って、もうこの国にあの女居ないわ。それにここに来る前に感知した人間も離れて行ってるわ〉
「終わっちゃった感じかー。結果が気になるな」
〈聖剣のオーラから離れている人間が持ってるっぽいわよ〉
サキュバスさんが見逃したってことか? そんなメリット無いはずだが……
〈何か魔王サイドであって急いで帰ったとかが考えられる可能性で1番それっぽいかしらね〉
「たしかにな」
聖剣が無事勇者に渡ったんならよわよわ勇者にはならないんだし、放置でいいか。
「用は済んだし、この国には俺の糧になってもらおう」
来た道を戻って脱出。お城に手をかざして、
「【スリップ】」
『レベルが上がりました』『レベルが上がりました』
今ので何人殺ったかな? もうだいぶレベルは上がって前より上がりにくくなってるのに2も上がったし、結構生きてたんだろう。それにしても……
「なんか人少なくないか? もっとパニックが起こると思ってたんだけど」
〈私たちがお城にいる間にほとんどの住民が死んだようね〉
「あっ」
〈何か心当たりでもあったの?〉
「教会のおっさんどもが生命エネルギーでアロンの杖とやらを使うとかなんとか言ってたなーって」
〈アロンの杖? あれを使ったんならここがこんなに綺麗に残ってるはずがないわ、間違いなく偽物でしょうね〉
「おーけー、メロス、アロンの杖とは」
〈アロンの杖は、使用した場所で十個の災いを
メロスさん、まぢ博識。それにしてもあのおっさんども、パチモン掴まされてあんなにイキってたのかよ。恥っず。
「生き残りはいる?」
〈探しに行くのがめんどくさいわ。人数も少ないからわざわざ殺してもレベルアップしないわよ?〉
「なら今回はスルーかな。もうお昼だし、一旦寝たいから家に戻るぞー」
〈了解よ〉
人の居ない静まり返った道を歩いて大司教の家に戻る。
「ただまー」
〈ご主人の家ではないんだけどね〉
出発の時と同じように誰もいない。
「そういえば大司教さんはどこにいるんだ?」
〈さぁ、勇者達に着いて行ったんじゃない?〉
「……俺の素顔見られてなかったっけ?」
〈どちらにしてもあの魅了は記憶が残らないようになってたから大丈夫よ〉
「選べるん?」
〈あれくらいのサキュバスなら証拠を残さないようにしたり、わざと残して苦しめたり、選べるのよ〉
サキュバスさんありがとう。ほんとに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます