48話 最終兵器と建御雷神

数合、剣とナイフを交え、一旦距離を取る。


 ピシッ


「え?」


 ナイフからすごく嫌な音が聞こえた。


「ふざけんな!」


「それわたしが悪いの?」


 これ以上使ったら折れかねないから、ストレージから今剣と布都御魂を取り出し、左手で今剣を逆手に持ち、布都御魂を右手で持つ。



「らああああああああ!!!!!!」


「うわっ、ビックリしたー」


 武器を変えるのを眺めてたニュクスに不意打ち気味の攻撃をするが、難なく受け止められた。


「そろそろ準備運動も終わったし、こっちからいくわよ!」


 そう言うと室内が急に真っ暗になり、ニュクスの姿が見えなくなった。



 警戒して今剣を構えt……


「ガッ」


 下を見ると腹部から黒い刃が数本刺さっていた。


「いつの間に」


「ここら辺一帯を夜にして私のテリトリーになったから人間を殺すのなんて造作もないわ」


 ずっる。神能をフルで使われたら勝ち目ないやん。あー、だんだん力が抜けてきた、


 どうせ死ぬんなら秘密兵器を使ってから死のう。



「【真・鼓舞】【剣神憑依】」


 緑のオーラが広がった後、布都御魂が輝く――


『肉体の操作権を剣神建御雷神タケミカヅチに譲渡しました』


 身体が全く動かなくなったが、最初の【深化】の時の精神にまで入ってくる感覚はない。


「む? かなり未熟な肉体に呼ばれてしまったようだな。状況をかんがみるに仕方ないか……」


 

 体を動かすことはできないが、触覚以外の感覚はいつも通りだ。



 「……もしかして中身代わったの?」 


 「あまり時間もないから手短に、オレは建御雷神だ。なかなかいいスキルがあるし、早速倒してしまうとしよう。【魔眼】」


 

 真っ暗だった視界の中、俺とメロスの間の魔力のパスと、ニュクスと呼び出された取り巻きどもとのパスが見えるようになった。でも何で【深化】を使わないんだ?



「いまごろこの身体の少年はなぜ強力なスキルを使わないのか疑問に思っているかもしれないが、そのスキルは同じ体でも動かしてるのがオレだから無理だ。お前にしか扱えないぞ」


 ユニークスキルだからかな?



「何をしたって無駄よ!」



 そう言うと部屋が急に明るくなる。………いや、違う。ニュクスの両手の間に“夜”が凝縮されて、放たれる。



「しっ」



 俺には全く見えなかったが、状況から察するに、凝縮された球を布都御魂で斬り裂いたようだ。 



「まだまだ!」


 今度は魔眼の光のラインも見えないほど部屋が真っ暗になる。




「なるほど。夜の範囲内ならどこからでも攻撃できるわけか。だが、中の少年のような視覚頼りの者なら敵無しだろうが、相手が悪かったな。オレは剣神だが、戦神でもあるからな」


 

 暗いし、体がどう動いているのか分からないが、口ぶりからすると四方八方から来る攻撃を凌いでいるようだ。


 

「【スリップ】」


「きゃっ!」



 あれれ? ユニークスキルは使えないんじゃなかったのでは? 【深化】だけなん?


 

「神器があればあんたなんて……」


「戦いに『もしも』は無いぞ」 


「しょうがないじゃない! こっそり抜け出すのに神器なんて持ってこれるわけないでしょ!」


 

 こっそり抜け出したのかよ。



「何にせよ、時間がないからご退場願おう」


「お待ちください」



 暗かった部屋が徐々に明るくなっていく。俺とニュクスの間に、黄色とオレンジの中間の色のパッツンでニュクスとお揃いなじょせいがいた。……小柄なニュクスと比べて、かなり色々なところが発達しているが。親子かな?



「む? 保護者か?」


「えっ……?」


「この子はへーメラー、わたしの娘よ!」



「……なんかすまなかったな」



 ……ごめんな。



「同情なんていらないわよ!」



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