42話 リスポーン地点探しとヒロイン?

大司教さんの家で起きる。まだ少し集合まで時間があるし、一旦リスポーン地点更新してから行き先考えよう。


 どこかなー。教会とお城の周囲にはなかったから、スラム街の方かな? まぁ、この聖王国は帝国の帝都と同じくらいの広さだからそこまで時間もかからないだろう。






 無い、全く無い。町の人に聞いてみたいけど、外套を外すのも嫌だし、どうしようか。


 ……もしかしたら外にあるのかもしれない。少し外も探して無かったらサキュバスさんに聞いてみよう。



 再び壁を乗り越えて、探し始める。


 お! なんか建物がある!早速行ってみよう。



 外見は木でできた掘っ建て小屋だ。ハズレかも。一応入ってみよう。


「家具すらないのはおかしいな」


 ホラー要素あるのか? 苦手ではないから大丈夫だと思うが、呪いとかかけられたら面倒だ。


「お化けも何も出てこないし、ほんとに何もないなー」


 あれ? 天井にボタンがある。こんなの普通気が付かないだろ。たまたま疲れてハァーって仰いだから見つけられたけど、せめて木製じゃなければ気づけたんだが。


 とりあえずジャンプして押してみる。


 カチッ


 ゴゴゴゴゴゴゴッ


 足下に穴が空いて、階段が出てきた。隠し通路的なアレか。いいね。もしかしたら俺の【宝探し】が役に立ってたのかもなー。



 真っ暗な階段を壁に触って転ばないようにゆっくり下りていく。明かりが欲しいな。そんなアイテム持ってないしなー。あっ、


「火種よ〖プチファイヤ〗」




 あったわ。コスパ良すぎる光源。これは長時間使う魔法じゃないからすぐ消えちゃうけど、サバイバル用に取っておいた木の枝を使って松明にする。松じゃないからただの燃える木の枝だけど。


 本来の火は知らないが、魔法の火種だから簡単に燃やせた。現実だとなんか他に手間がかかるだろうけどホントに魔法さまさまだ。


 腹が減ってきたのでついでにストレージからまだ大量に残ってるフランスパンもどきを食べながら進む。


 〈汝、愚かな人の子よ〉


「うわっ!」


 びっくりした。話しかけられるとは思ってなかった。てか念話か? 誰だろ?


 〈そのまま進むといい〉


 あー、ここの隠し通路にいる何かが話しかけてるってことか。んーーー、こっちからは繋げれない。一方的な念話のスキルとかかな?



 〈よく来たな、人の子よ〉


「たぬき?」


 〈ちがうわよ!〉


「キャラ崩れてるけど良いのかい?」


 〈誰のせいよ!〉


 むむ、長いシマシマのしっぽがあるし、眉間に黒い筋があるからコイツはアライグマか。


「なんでそんな鎖で雁字搦めにされて吊るされてるんだい?」


 〈……〉


 なんか後ろめたいことがあったっぽいな。わかりやすい。


「ボクの……んー、ペットになるなら解放してあげるけど、どうだい?」


 〈こんな何も無い所から出れるならなんでもいいわよ!〉




 とりあえずキャシーちゃんのナイフで切り掛かる。


 ジャラララ


 ……鎖に当たって鎖同士で擦れる音が虚しく鳴り響く。


 〈そんな切れ味がそこそこいいだけのナイフで切れるわけないじゃない〉


 だまらっしゃい。キャシーちゃんは偉大ぞ。


 お次は新入りのグルムくん、竜が斬れるなら鎖程度いけるだろ。


 ジャラララ


 お前っ、使えんな!




 次だ次。こうなったら最終兵器の布都御魂ふつのみたまパイセンだ!


「死に晒せっ!」


 〈あんたこそキャラ崩れてるじゃない!〉


 うるせー! 自慢のキャシーちゃんのナイフで切れなくてムカついてんだよ!


 ジャラララ


 〈無理よ、いくら神に対抗できる剣でもこの鎖は特別製だk〉


「右腕【深化】5%!」

『右腕の【深化】出力:5%を確認』


 スパンッ


 いけた。そして何故かパイセンまで黒いオーラを纏ってらっしゃる。やっぱ【深化】しか勝たん。



 〈何よ、それ〉


「ん? 誰が君を解放してあげたと思ってるのかな? 感謝してよ」


 〈なんなのよあんた……ありがとう〉


 お礼は大事よな。


「それで、アライグマちゃん、君の名前は?」


「……今は無いわ。あと私は男よ」


「は!?」


 待て待て、え、ツンデレオカマの喋るアライグマということになるぞ?


 いくらなんでもクセが強すぎだろ! 今まで会ったヤツらみんな強かったけど、コイツはダントツでヤバイッ!


「えー、厳正な選考の結果、残念ながら今回はご縁がなかったという……」


 〈【従属】〉


「え?」


 〈ん? どうかしたの?〉


 何か不穏な念話が聞こえたんだけど


「今何かした?」


 〈えぇ、約束通り私の全てをあんたに捧げたのよ! 悪い?〉


 いや、なんでそんなキレ気味なの……


「ハァ」


 〈なんでため息つくの?〉


「色々疲れたんだー」


 〈へー、人間も大変なのね〉


 お前のせいだけどな?


 〈そうだ! 折角だし名前つけなさい〉


 なんで俺が命令されるんだよ。


「んー、アラ男とかは?」


 〈なしね〉


 流石に冗談だけど。


「メロスは?」


 〈あら、なかなかカワイイわね。それにするわ〉


 ??????????


 え? どこら辺にカワイイ要素があった? 俺がおかしいのか? いやいや、このオカマがおかしいはずだ。



「フゥー、ま、いいならいいけど」


 〈? ええ、結構気に入ったわ〉


「走れメロス!」


 〈まだ体力が回復してないから歩くのでやっとよ〉


 了解っス。


「一旦奥に進みたいんだけど、いいかい?」


 〈どこまでも着いていくわ〉


 残念ながらツンデレもオカマもアライグマも俺のストライクゾーンには入ってないから、ヒロインにはなれないから!

「だからそんなヒロインみたいなこと言うなよ! 本物のヒロインが来なくなったらどうしてくれるんだ!」


 〈え?〉


「え?」


 口に出てました?


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