41話お宝と姉の近況





教会にはなかったから次はあのお城に行こう。あそこなら間違いなくあるだろ。






 大分手馴れたのであっさり侵入。とりあえず高い所にあると思って探したら、案の定4人で厳重に警備している部屋があった。窓は間違いなく無いだろうから正面から入らなければいけない。


 火事場泥棒もいいけど、実際の勇者の戦力を見ておいた方がいいかもしれないし、今のうちにお宝持っていこうかな。折角ここまで来たし。





 あの見張り達の気を逸らして入ってしまおう。


 小さな声で、

「〖chaotic arms〗」


 2本だけ遠くに出して適当に壁をぶち抜いてどデカい音を出す。


 うん、慌てて警備のヤツらがそっちに行った。ガラ空きだ。



 やっぱり鍵がかかっていて、扉も豪華で頑丈そうにそびえ立っている。残った8本の腕で破壊。すぐに警備のヤツらが戻ってくるだろうが、手当り次第ストレージにぶち込めば解決なのだ!




 …………ん? んんんん?


 何もない? いや、大剣が1本だけある。なんか紙が横に置いてある。どれどれ……


 {やぁ☆ これをわたしの弟子が読んでるかは知らないが、そうなら流石わたしの弟子だと褒めておこう☆}


 待て待て


 {ネタばらしをすると、わたしは死んでいなかったんだよ☆ 現皇帝陛下にはちゃんと後から会ったんだけど、君には会えなくてね☆ 君ならここに入ると思ってこれを置いといたんだ☆}


 直接会えや


 {今後も陰ながら君を応援しているよ☆ お土産に竜殺しの大剣グラムだけ置いといたから活用してね☆}



 竜殺しかー。いいね! できれば全部置いてって欲しかったけど。てかあれで生きてる師匠は何者なんだよ。



 文句を言ってもしょうがないし、剣をしまって逃走しよう。


 逃ーげるんだよー!






 お城が騒がしくなったけど、無事脱出。現在時刻は……3時。一旦大司教さんの家に戻ってログアウト休憩しよう。


「色々すり合わせは終わったわよ」



 お? サキュバスさんだ。


「寝るから大司教の家に行くけど、問題ないかい?」


「ええ、家に罠は張っていないから大丈夫よ」



 また朝に大司教んち集合の約束をして解散。







「あれ? 姉さん徹夜でゲームしてたの?」


「ん〜? こうくんか〜、早いね〜。その通りちょっと調合に夢中になっててね〜」


 そういや魔女プレイなんだっけ。俺のプレイングはスローライフとは完全に無縁な感じだから若干羨ましさもある。


「いや〜、腰痛の薬を1から作りはじめて最後は湿布に行き着いてたのは驚いたな〜」



 撤回。ゲーム内で湿布なんか作って何が楽しいのか。




「こないだなんて兵士のジョンさんにプロポーズされてね〜」


「は?」


「やんわりお断りしたんだけど〜、しつこかったから竜でも殺してきたら考えるって言ったんだ〜」


 なんか雲行きが怪しくなってきた。


「そうしたら〜、竜の峡谷に向かったらしいんだけど〜、途中の平原の狼に食べられてるのが見つかったんだって〜」


 姉さんが間接的に人殺ししちゃったよ。


「それで〜、びっくりして調合失敗したら〜、のど飴ができたんだ〜」


「は?」


 意☆味☆不☆明



「そっか、よく分からんけど、トイレ行ったからゲームに戻るわ」


「あ〜い。あっ、今度会わな〜い?」


「いいけど、どうやって?」


「専用アプリからフレンド登録して、ゲーム内で連絡すればできるよ〜」


 姉さんがまともに使いこなしているだとっ!


「風邪でも引いてるんじゃ?」


「? よくわかんないけど元気だよ〜」


「じゃあ、なんでそんなこと知ってたんだ?」


「沙奈ちゃんとそれで会ったから〜」


 なるほど。納得だ。にしても本当に仲良いな。下手な男に嫁ぐぐらいならいっその事沙奈さんに貰って欲しい。


 専用アプリでフレンド登録をして、部屋に戻る。姉さんのプレイヤーネームは“リン”だ。本名の凛そのままだ。もう少し捻って欲しかった。



 そして、ログイン。グル〜

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