43話 能天使長と魔瘴気
今度はアライグマを連れて進む。リハビリを兼ねて自分で歩くメロス、えらい。
行き止まりにでかい扉がある。この中にお宝が眠っているのか? 何をしにこの隠し通路に来たのかは忘れたが、とにかく楽しみだ。
「待てよ、入口みたく隠し通路とかありそうだな」
〈そんなのなかったわよ。それに私のいた部屋からは地上に戻れないように入口塞がれてたから、進むしかないわ〉
閉じ込められてるのか、ということはこの奥でボス戦が始まる感じだな。準備も特にいらないし、早速突入じゃい!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
でかい扉がでかい音をたてながらゆっくり開いていく。
「災獣を解き放った愚者よ、この能天使の長、カマエルが災獣とともに討ってくれる!」
なんか金髪のパーマの羽根の生えた男が叫びながらレイピアを振り回しながら近づいてくる。
なんか気になるワードが聞こえたが、とりあえずコイツをぶっコロコロしなきゃここから出れないから先にぶっコロコロする。
「右腕【深化】5%」
『両腕の【深化】出力:5%を確認』
「【天剣乱れ突き】!」
黒いであろう腕と光り輝くレイピアの先が何度もぶつかり合う。ほとんど互角だ。
〈【ひっかき】〉
そして、敵の後ろからメロスが2、3回引っ掻く。さすがアライグマ、攻撃的やな。
「ぐっ、この災獣が! 調子に乗るな!」
天使がメロスを蹴り飛ばす。だが、メロスは何ともなかったように着地した。
「〖chaotic arms〗」
いつも通り敵の周囲に腕を湧かせ、同時に叩きつける。
「【瞬光】!」
光の速度かと思うほどの速さで避けられた。これかなりヤバイかも。光の速度は対応できる気がしない。
〈【巨大化】よ!〉
今度はメロスがでかくなってきた。ここは小学校の体育館レベルに広いけど、それがあっという間に埋まっていく。
「デカすぎでは?」
〈狭くすれば速さなんて関係ないのよ〉
正論でございます。
「くっ、まだだ! 【審判】【裁きの……」
〈【覚醒】、【崩壊の爪撃】〉
俺の出る幕はなかったようだ。灰色のオーラをまとったメロスによる、スキルで赤黒くなった爪の攻撃で天使はボロボロと崩れていった。
「愚かな人間よ、必ずやその災獣を解き放ったことを後悔するだろう」
「さっきからスルーしてたんだが、見た目だけは可愛いアライグマをつかまえて災獣だのなんだの呼ぶなよ」
〈ご主人……〉
「中身なら災害レベルだから、激しく同意だけど」
〈どっちの味方なのよ!〉
「半々だよ、賛成しつつ反対してるだけだ」
〈あっそ! もうご主人なんて知らない!〉
ツンデレはちゃんと美少女になってから出直して、どうぞ。
『レベルが上がりました』『レベルが上がりました』『【隠密】のレベルが上がりました』『【隠密】のレベルは上限です』『【潜伏】のレベルが上がりました』『【体捌き】のレベルが上がりました』
そんなアホなやり取りをしてたらいつの間にか天使が消えてた。影の薄いやつだったなー。ナムナム。
通常サイズに戻ったメロスがなにか言いたげにこっちを見ている。スルーしてやろ。
「メロスは美少女になれないん?」
〈唐突ね! まあ、出来なくもないけど〉
「ならしてよ、今すぐ、ライトナウ」
なんで焦らしてたんだよ、まったく……
〈そうすると弱体化するのよ、弱っちい魔物なら器の大きい人間に寄せると空きができて強くなるけど、私みたいな強いやつを沢山食べて器を拡張して余裕があるのは逆に弱くなるのよ〉
??????????
「なんの器? 心の度量的なやつ?」
〈そんなわけないでしょ!
魔瘴気? 知らない単語を使って説明するなよ、分かりづらい。
「魔瘴気とは?」
〈今の時代の人間はそんなのも知らないの!?〉
「いや、俺だけかもしれんけれども」
〈まあいいわ。魔瘴気は、その名の通り、魔獣や魔人を作っちゃう瘴気のことよ〉
「その瘴気から湧いて出てくると?」
〈ちがう! 魔瘴気が体に入って変質させるの!〉
「なるほど」
つまり、魔瘴気とやらを吸うことで人間から魔人、動物から魔獣になるってことかな? この情報ってちゃんと出回ってのかな? 機密情報とかそういうのじゃないよな?
一旦難しい話は置いておこう。
「なんでもいいけど、美少女にはならないってことでOK?」
〈オーケーって何よ?〉
「良いって意味だ」
〈何にしても、私は人間には絶対ならないから!〉
残念だ。男のロマンだったんだが……
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