36話 強制と用事
一件落着だな。これで晴れて自由の身だ。
「ほれ」
皇女さんが手を差し伸べてくる。優しいな。
「助かるよ」
RPも忘れずにする。そして、手を取って……
『縲絶蔓笆?縲代↓繧医k笘?サ昴?????謾ケ騾?縲∝所縺ウ笘??蠅を確認しました』『実行中……』『失敗しました』『条件を確認』『条件は満たしています』『強制ログアウトを開始します』
は?
何もしてないのに
自室なう。
なんでログアウトさせられたんだ? 意味わからん。とりあえずもう1回入ろう。
視界グ……
『ログインに失敗しました』『ログイン可能まであと10時間49分です』
ルグル?
またログアウトさせられた。現在11時半。ほぼ11時間入れないそうだ。つまり、入れるようになるのは22時半くらい。
いや、意味わからん。問い合わせしようかな? いや、【深化】関連の仕様の可能性もある。はやまるな。
考察は無理。多分全身の【深化】が原因とかぐらいしか考えられん。なんでかはマジでわからん。
でも暇になったな。チャーハンでも作るか。
ん? LOINが来てる。誰だ……図書委員の相方の子からだ。今朝に送られてきたみたいだ。どうやら今日が夏休み唯一の当番の日のようだ。完全に忘れてた。ご飯食べたら行くと送ってから謝罪もしとく。
「いやー、本当にすいません」
「いえ、大丈夫です」
図書室に昼過ぎにくる図書委員とか無いわー。俺のことだけど。
相方さんはメガネをして、おさげの陰キャまる出しの子。かなり失礼だったが、こういう子に限って眼鏡を外すと美人なんだ。俺知ってる。
眼鏡キャラの眼鏡を外すか否かの議論も未だに見受けられる。でも現実で可愛いのは外した時だ。もし付けたままの方が可愛いと思ったなら、それは重度のメガネフェチだ。その割合はノーマルには及ばない。つまり外した方がいいという結論に至るわけだ。知らんけど。
でもこの子どっかで見たことある気がするんだけどな…………クラスメイトなら見たことある気がするのは当たり前か?
まぁいいか。どうでもいいな。
「なんかやることあります?」
「来てる人もいないし、特にないです」
課題は終わってるから、なんか面白そうな本がないか探してみよ。
「ちょっと本見てきます」
「ええ、ごゆっくり」
なんか同級生の会話の距離じゃない気がする。お互い敬語で。
おっ、神話関連の本がある。いろいろ読んでみよう。そういや、AWO内でも本をもらったな。読む前に調べてみるか。
たしか、“せんじりゃっけつ”とか言ってたな。どれどれ……フムフム。平安時代に安倍晴明が撰した陰陽道の、現存する中で最古の書物か。よく分からん内容を使うとは思えないし、ゲーム的には陰陽道関連の術が使えるようになるのかな?
でも、それであの皇女の脅威になるのか?何かそれ関係が弱点なのかもなー。
それにしても静かだ。相方さんは本に夢中で無言だし、他には誰も居ないし。邪魔しちゃ悪いし俺も黙って読んでよう。
「お疲れ様でした、午前中はありがとうございました」
「いいえ、午前も人は居なかったので大丈夫です。お疲れ様です」
帰ってった。あっさりしてんなー。変に媚び売るやつよりかはいいと思うけど。
帰宅。
「あ、こうくん。おかえり〜」
「ただいま。ちゃんと冷蔵庫に入れといたチャーハン食べた?」
「うん、美味しかったよ〜」
「そりゃどうも」
料理を褒められるのは純粋に嬉しい。
「だからね〜、お姉ちゃん、頑張ってオムライスを作ったんだ〜」
姉さんがまともな料理を!? いや、きっと焦げてるかほぼ生に近いやつになってる可能性が。
「見た目は普通だな」
「全部普通です〜」
ふくれっ面。可愛くなくもなくもなくもないんだからねっ! (訳:可愛い)
「いただきます……うまい!」
「でしょ〜、沙奈ちゃんと作ったんだ〜」
アシストありか。なら美味しいのは納得だ。沙奈ちゃんとやらは、たしか姉さんの大学の友人だったはずだ。2、3回うちに来たことがあったはずだ。なんかしっかり者の美人さんだった気がする。姉さんとは相性が良さそうだなーって思ってた。たしか。
「ごちそうさまでした。沙奈さんにはお礼言っといて」
「わかった〜」
「じゃあ、部屋戻るから」
「あ〜い」
とりあえず仮眠をとって、今日の深夜はイン出来なかった分やろう。おやすみー。
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