37話 餞別と出国

イン。ただいまの時刻は22:40。自室のベットにいる。誰も居ない。外套と仮面が机に置いてあったので回収して、ベルを鳴らして待つと、メイドさんと一緒に皇女さんも入ってくる。



「ようやく目覚めたかの」


「おはようございます。ご心配おかけしました」

 

「構わんよ。それより、一応あの時のことを話して今後どうするか聞いておこうと思って来たのじゃ」


 ふむ。


「とりあえず妾以外の皇族は皆殺しにして、宰相に成り代わっておった魔族も殺したのじゃ」


「なかなか過激ですね」


「帝位争いなどこんなもんじゃよ」


 ほえ〜


「まあ、そういうわけで革命は成功して、無事妾が皇帝になったのじゃ」


「それはよかったですね」


「そこでの、お主には妾の婿になって欲しいのじゃ」


 ん????



「もしかして自分のこと好きなんですか?」


「お主のことは嫌いではないが、好きとかいうわけではないのじゃ。もっと並び立てるくらい強くなったら考えてやるのじゃ」



 ガチトーンで振られた。別に告ったわけでもないし、好きでもないからいいけど、なんか釈然としない。



「面倒な貴族避けにしようと思っての」


 わお、サイテー。


「お断りします。自分はこのまま東へ行きますので」



「そうか、まあ、そう言うと思って武器でも餞別に渡そうと持ってきたのじゃ、ほれ」



 短剣と太刀が渡される。


「これは今剣と布都御魂というものらしいのじゃ。妾の【超直感】がこれを渡しておけと囁くからの」


 今剣いまのつるぎは義経が奉納してあったのを持って行って守り刀として使ってた物だったはずだ。


 布都御魂ふつのみたまは日本神話の太刀だ。毒気からの覚醒と荒ぶる神を退ける力を持ってたはず。


 何故急に日本関連の物が増えるのか。強そうだからいいんだけどね。


「ありがとうございます」


「うむ、もう出立するのであろう?」


「ええ、お世話になりました」


「また遊びに来るのじゃぞ」


 いや、この人と何して遊ぶんだよ。あ、


「王国と同盟とか停戦条約とかを結んで貰えませんかね」


「? 唐突じゃの」


「実は向こうにコネがありまして」


 直通の。


「ふむ…………国際情勢もあるが、妾がそれに縛られる謂れも無いか」


 難しい話かな?


「承諾しよう。王国に伝えてくれるのか?」


「まあ、連絡手段はありますので」

 

「それならば、帝国側にもお主との連絡手段が欲しいのじゃが」


 なら【支配】が必要になるけど、この皇じ……皇帝はそんなタマでもないし、誰かいい人いないかな? 信用はなくても支配状態になればこっちの命令は絶対かな? なら誰でもいいか? 検証が足りない。とりあえず、


「皇帝さんに近くて信用のおける人っています?」



「もしや【支配】の連絡網か? 他にあるから問題無いぞ」


 あれれ?


「手を出すのじゃ」


 言われた通り出す。


「【盟友】、妾はお主の危機を救おう」


 あー、誓い合う感じのやつね。了解了解。


「自分は皇帝さんの助けに応じましょう」


 俺と皇帝さんの体から何か黄色の線が結ばれた。これで完了かな?


 〈聞こえるかの〉


【支配】の連絡と同じ感じだ。


 〈聞こえてますよ〉


 〈では、用も済んだし妾は眠るからもう行って良いぞ〉


 ざっつだな。いいけども。






 出国チェックだ。革命があったのによくいつも通りに持ち直せたな。皇帝さんの手腕か国の性質か。


「君は異界人の人じゃないか、大変な時期に来てしまって残念だっただろう」


 反対側の門なのに入る時と同じ人だ。ラッキー。早く済みそう。


「一応身分証を見せてくれ」


「ほい」


「……ああ、問題ない。行ってくれていい」


「お疲れ様でーす」



 さて、次の国に向かいながら迷子ちゃんに連絡しよう。



 〈もしもーし〉


 〈はい♪ なんですか?〉


 〈帝国でなんやかんやあって新しい皇帝と話し合って王国と同盟か停戦条約か結ぶ流れになったからよろしく〉



 〈………………わかりました♪〉


 〈じゃあよろしくねー。バイバーイ〉


 〈はーい♪〉



 すごい簡潔に済んだ。そういえばステータスの確認しばらくしてなかった。しよ。


「ステータスオープン」

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