33話 稽古と匂い考察



「稽古を始めるのじゃ」



「何をするんですか?」


「まずはスキルに頼らない体捌きを覚えさせるのじゃ」



 PSの特訓というわけね。


「では、始めるのじゃ。【絶対領域】」


 半透明の膜が半球状に広がってる。かっけぇ


「これでお主だけスキルが使えないようになったはずじゃ」


 まじ?


「バックステップ」



 …………何も起きない。スキル封印できるとか狡くね? これ使われたら誰も勝てないと思うんだが。チートや!


「武器を構えるのじゃ」


「はい」


 キャシーちゃんのナイフだけが頼りだ。稽古なのに木剣じゃないのは俺が皇女さんに勝てないのが明確だからか。まあ、その通りなんだが。


「安心せい。妾もスキル、神能は使わないのじゃ」


 完全に舐めプ。天誅を下さねば!


「では、ゆくぞ」



「グベッ」



 あかん、速すぎる。手で持ってる木の枝で殴られたくらいは分かったけど、移動速度ならワンチャン団長さんより速いぞ。あー、今のでHP半分持ってかれた。


 木の枝で負けるのは嫌すぎる。



「はぁっ!」


 走ってナイフで横に薙ぐ。


「遅いのじゃ」



「ガフッ」


 攻撃が届く前に頭を木の枝で殴られる。HPはもうギリギリ。


「はぁはぁ、無理です」



「む、レベル差があり過ぎたかの。かなり手を抜いたんじゃが」


「では、わたしの番☆」



「はぁ、ちなみにおふたりのレベルは?」


「妾は192じゃ」


「わたしは56だよ☆」


 おい待て、皇女さん。あんた団長さんの倍以上じゃねーか。どんな人生歩んだらそうなるんだよ。


「まず人間で妾に勝てる者はおらんからそんなに凹むでない」


 いや、凹んでないが。



「じゃあ、やりますよ」


「そうだね☆」



「念の為2人のスキルは封じておくからの」









 何度もナイフとナイフがぶつかり合う。コイツ意外と強い。今は何とか拮抗してるけど、絶対手抜かれてる。


 そういえば、ナイフの代わりに使うようにと短剣もらってたな。忘れてた。これ投げれば隙ができそうだ。



 ストレージから短剣を取りだし、左手で投擲、と同時にナイフを振る。


「いい不意打ちだけど、わたしには通じないね☆」


「ちっ」

 最小限の動きで避けられた。しかもナイフの攻撃も軽く受け止められた。



「少しペースを上げようか☆」


「ぐっ」


 速いし鋭くなった。こちらと同じナイフ1本なのに少しずつ被弾してる。そして、自称師匠は俺のナイフを弾き、首にナイフを当てる。



「そこまでじゃ!」


「まだまだ振りが大きくて隙だらけだね☆」



「もう1回お願いします!」


 クッソ悔しい。













 疲労困憊ひろうこんぱいとはまさにこの事。あの後ひたすら戦いまくったけど、1回も勝てなかった。そのまま夕飯を現実とこっちで食べて、どうやら風呂があるようなので入ってきた。


 今まで入らなかったが、別に臭ったりしてなかったはず。自分では気づかなかっただけかもしれんが。でも指摘されなかったから大丈夫なはず。風呂に入らなくてもいい仕様かな? いや、可能性として高そうなのは死亡時に肉体の状態がリセットされてたからかな?


【深化】状態然り、傷跡然り。そもそも傷が残ると詰むからリセットは必須。匂いだけ残るという可能性は運営がよっぽど風呂に入らせたいと思ってなければかなり少ないはず。



 現実では毎日入ってるから今まで気づかなかった。これからはできるだけ入るようにしよう。





 やることも無いのでログアウト。



 しk(ry



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