32話 お許しと力の詳細



「…………」



「えーと、口を滑らしてすみません」


 絶賛土下座中。一体何が彼女をそこまでキレさせるのか。普通殺すまで至らなくない? 過激だよな。


「……はぁ、仕方ない」


 よかった。許してくれたっぽい。


「妾の足を舐めて一生服従すると言うのなら許してやるのじゃ」


「は?」


 は?



「む? 聞こえんかったか? 足を舐めて一生服従しろと言ったのじゃ」



 やりすぎだろ。流石にこれは逆らってもいいでしょ。


「いや、流石にそれは承諾しかねます。自分は旅人なので」


「冗談じゃ。妾は寛大だからな!」


 コイツ! 分かりにくいだろ! 謝罪してるやつに冗談言っても真に受けるだろ、普通。それに寛大だったら、キレて人を殺さんだろ。



「兎も角、今日のお主らの仕事は4軒じゃ」


「では、行こうか☆」


「あ、はい」














『スキル:【潜伏】を獲得しました』『スキル:【宝探し】を獲得しました』『【歩術】のレベルが上がりました』



 4軒目で漸くスキルが手に入った。こんなに手に入るのが早かったのは、単純に【忍び足】で隠密行動の効率が上がってたからだと思う。




 お宝ザクザクでウハウハや!



 実用性は欲しかったけど。



「まさか昼までに回りきるとはな」


 モグモグ


「わたしの弟子なだけあってわたしの本気に着いてこれるようになっているのですよ☆」


 モグモグ


「……ふむ」


 ウマウマ。


「少し稽古をつけてやるのじゃ」



「稽古ですか? あ、ごちそうさまでした」



「そうじゃ。まだ弱いからの。ごちそうさまでした」


「そうだね☆ 現状、怪盗であるわたしより弱いからね☆ ごちそうさまでした」


 日本の食事の挨拶は一言だからこのまま浸透しそう。てか、食後の運動にしては過激にならない? 帰った後すぐ現実で食べてきてよかった。なんか長くなりそうだし。












 屋敷にはどこでも稽古場みたいなのがあるのか? ここは東京ドーム1個分くらいはありそう。こんなに広くて何すんだよ。てか普通の部屋っぽいところを東京ドームにするって考えると、帝国の謎技術はとんでもないな。




「そういえば、先程殺された時何されたんですか? スキルって発声が必要だと思うんですが」


「それは妾の神能じゃからの」


「神能ですか?」


「うむ、妾は太陽神ヘリオスを滅ぼしてその力を奪ったからの」


 ヘリオス、ヘリオス……どっかで聞いたことあるな。なんだったっけ?



 ヘリオス……あ! たしかギリシア神話の1柱だ! 早めの中二病を患ってた時、神話関係はそこそこ調べたからなー。


 このゲームはギリシア神話をモチーフにしてるのかな? どういう世界観なんだろ?


 いや、それよりも、


「神を滅ぼしたんですか」



「なんか近くの山に棲みついて山火事が起きとったから、成り行きで妾が討伐したのじゃ」



 成り行きでやっちゃったかー。神も可哀想に。



「まあ、そんな訳で太陽から派生した火を操れるのじゃ」



 チートやろ。羨ましい。



「まあ、神能を持ってるのは妾と、ポセイドンを滅ぼしたレフトのアバズレしかおらんから、お主が神能持ちと戦う機会はほとんどないのじゃ」


 レフトってのは確か、王国と帝国の北の山脈を越えた先の国の名前だったな。ポセイドンは海洋の神だったから水を操るんかな?


 ポセイドンの方がよく聞くが、たしか、誰かの本ではヘリオスがアポロンと同一人物とされてたはず。その場合、どっちもオリュンポス12神の1柱だから、力量的にはどっこいどっこいかな?


 懐かしいなー。まさか仮想空間で、必死に覚えた神話知識が役立つとは。でも、複雑な中国神話とかじゃなくて良かった。そっちは諦めてたからな。ヨーロッパの主流なやつと日本神話、エジプト神話くらいしか調べなかったからなー。




 待てよ、そう考えると、この皇女さん強すぎない? 素で神相手に勝っちゃった訳で、その後神の力を手に入れてる。


 ……マジで格が違ったわ。



 はぁ、いいなー。瀕死の神が降ってこないかなー。俺も神能欲しい〜。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る