30話 コソ泥と新要素確認
「それじゃあ、早速行こうか☆」
「いや、どこにですか?」
唐突だな。
「悪徳貴族を懲らしめにね☆」
こいつ話聞いてるようで聞いてないぞ。
自称怪盗は急に窓を勢いよく開け放つ。そして、窓から出て走り始めた。
どうしようこれ。着いて行った方がいい感じ? 無視はダメかな? ダメだろうな……
とりあえず着いてく。それにしてもかなり速くて追いつけない。あいつ10mはあるであろう門をジャンプで跳び越えやがった。すげ。
真似は無理なので俺は普通に通してもらう。
「やあ☆ 遅かったね☆」
「はいはい。それでどこに行くんですか?」
「悪徳貴族さ☆」
「……具体的な名前は?」
「さあね、やったことが悪だからこそ、わたしの出番なだけだし☆」
悪、ね……
「悪の判断基準は? 」
「んー、わたしが不快に思ったら、だね☆」
「それはエゴの押し付けですよ」
「そうかもしれないね☆ でも、わたしにはそれくらいしか出来ないからね☆」
「…………」
「まあ、とりあえず着いてきてね☆」
こいつは……
「あの、こんなに持ってていいんですか?」
「もちろんだとも☆ ここにあるのは全て後ろめたい物だからね☆ 訴えも出来ないんだよ☆」
だからって根こそぎストレージにぶち込ませるのはどうかと思うんだが。
今はどこかの貴族の屋敷のお宝をしまっている倉庫。真昼間からコソコソ侵入した。こいつの技量はかなりのもので、しかもスキルを使ってないから頑張って真似しよう。
「あと2軒回るから急いでね☆」
営業みたいに言うな。
「終わりました」
「じゃあ、どんどん行こう☆」
「で、この3家の宝は掻っ攫えたんじゃな?」
「ええ、異界人のすとれーじとやらは本当に便利だね☆」
「どうも」
「この調子で明日もやってもらうのじゃ」
「ちょっと待ってください。自分はコソ泥させるために協力を頼んだんですか」
「む、そうじゃの。本命は明後日の城への潜入じゃよ。それまでに潜伏できるようにの訓練じゃな」
なるほど。そのためか。まあ、なるようになるだろ。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした、のじゃ」
「ごちそうさまでした☆」
取ってつけたようなのじゃはどうかと思うんだが。
「自室に戻りますね」
「おやすみじゃ」
「良い夜を☆」
コイツら癖が強いんだよな。
自室。もう夕方になってる。今日は貴族の屋敷に3回忍び込んでお宝を根こそぎ貰ってった。一部除いて全部くれるらしい。太っ腹だ。売る時は足がつかないようにとは釘を打たれたけど。
さて、すっかり忘れてた新要素を確認してこう。
一つ目、GMコール。特に今はいらん。
二つ目、名前変更。しない。
三つ目、種族転生。条件が満たせてない。
四つ目、配信。アリバイ作りに最適。
五つ目、痛覚設定。これは変えよう。
まず、配信は俺が起こした事件とかを被害者、傍観者として配信するのはあり。普段のは取らなければいいし。配信許可メールは届いてる。今回の革命みたいな実行犯じゃなければやってみよう。
痛覚はどうしようか? 今はデフォルトで80%らしいしなー
……折角の機会だし、死ぬ時の痛みとかを味わってみたさもあるし、100%にしとこ。
設定完了。
うろちょろするのもあれだし、早めにログアウトして、夏の課題の残りを片付けよう。
視界(ry
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