22話 挨拶と手合わせ



領主邸は、王城よりほんの少し小さいくらいの大きさ。領地自体が広いから、広く作れるんだろう。そして現在、居間らしきところの扉の前にいる。


「まず、お父様に会ってもらう。事情は軽く説明するから、呼んだら入ってくれ」

「分かりました」


 設定考えなきゃ! 隣国と戦ってたりした場合、通してもらえなくなる可能性もある。上手く誤魔化さなければ。


 ………………隣国の悪い噂を調査しに行く旅人を装った諜報員という設定とか? これくらいしか思いつかん。あとで迷子ちゃんに念話で連絡しとこう。


「入ってくれ」


 中からキアーロちゃんの呼ぶ声が。


「失礼します」


 ノックとかした方が良かったかな? 貴族のマナーがわからん。



「君が旅人か。異界人でもあるな? 座ってくれたまえ」


 ソファーに、カタギとは思えないムキムキのハゲたおっさんがドンと座ってる。貴族っぽい豪華な服を着ていてあんまり似合っていない。


 頷いて対面のソファーに座る。キアーロちゃんは、おっさんの斜め後ろに立ってる。



 向かいのソファーに座る。


「初めまして、クロと申します。お招き頂きありがとうございます」


「うむ、儂はリヴェレル・リュエール・エルガーだ。王都から来たのであろう? 王都の様子を聞かせて欲しくてな。部屋は用意したから今日は泊まっていくといい」


 宿代が浮くのは助かる。所持金は……ない! マジかー、使い果たしたままだった。食料と一緒に貰えばよかった。ここでなんか依頼を貰って金策しようかな。



「分かりました。王都の様子でしたら、王城が崩壊していますが、他の被害は軽度です。しかし、王族の方が第2王女だけとなりました」



「ふむ。把握した。ではお主は何用でここに?」


「秘密裏に隣国の悪い噂の調査をするよう言われましたので」


「なるほど。あの件か……眉唾でないと判断したか。第2王女は有能というわけか……」


 独り言を目の前で言うんじゃない! 気になるでしょ! てかほんとに噂あったのか。忘れずに報告しなきゃ。


「して、寝るには少し早いし、手合わせしないか?」


「では私も」


 は? 忙しいんだが。でも、仕方ないか……


「承知しました。まだまだ未熟者ですが、ご指導お願いします」


「うむ。訓練場まで行くぞ。着いてこい」






 クソ広い訓練場なう。武器は安全のため木剣。


「では私からで」


 深化と混沌魔術と、一応スリップもなしでいく。身バレ良くない。



「よろしくお願いします」


「では、はじめ!」


 おっさんの合図が訓練場に響き渡る。うるさい。


「【剣舞】」


 赤いエフェクトがキアーロちゃんと木の双剣を包む。強そう。


「【縮地】」


「! 【サイドステップ】」


 危うく食らうとこだった。すごい速さで距離を縮めるとは、でもまだ見えるから問題ない。ほんとにヤバいやつは見えんし。団長さんみたいに。



 てか使えるスキルが歩術しかないって、詰んでね?


 剣道なんて学校の授業くらいしかやってないし、運動神経も普通くらいだし。瞬発力には多少自信はあるがスキルに対応するのは難しい。


 よし。PSプレイヤースキルの訓練だと思おう。そう簡単に負けると思うなよ!





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