18話 対話と念話



ザッ


「! があが! ぎががげぐ!?」

「 ぐぐげぐがあ!?」


 なんて?

「何者だ!」 とか言ってんのかな?


 言葉が通じないければ対話出来ないじゃん!



 とりあえず両手を上げて話してみる。


「敵意はないよ。誰か人間の言葉を話せる者はいないかな?」




「がうがあ? がぎぐぐぎ!」

「があ!」


 なんか話し合ってる。通じた?


 あ、なんかおっきい奴が来た。


「がぎがご? 」

「ぎぐぐごげう」


 説明してるっぽい?



「にんげん、おまえ、だれだ」


 おぉー! 少し拙いけど喋れるのか!


「通りがかったから、挨拶をね」


「そうか、てき、ちがう?」



「もちろん。それより、ここはオーガの村なのかい?」


「……?」



 ゆっくり喋ったつもりだったけど難しかったか?


「ここは、オーガの住処?」


「そうだ」


 奪ったとかじゃないのか。てか、こいつデカくて圧がすごい。



「国……あー、人間と話してここ認められてる?」


「認められてる?」


 分からないのか。


「いいよって人間に言われた?」


「なんで?」



 勝手に住み着いてるパターンね。まぁ、人間が全て管理するなんて傲慢か。


 でも、よく討伐されなかったな。



「にんげん、いっぱい、たたかえる、しってる?」



 場所のことを聞いてんのか?


「ボクの支配下に入れば案内するよ」


「しはいか?」


 わかんないなら、誤魔化した方が楽そう。



「あなたに従いますって言ってみて」


「? あなたに、したがい、ます」



 できたのか? いつもはレベルが上がって分かってたけど、今回は上がってない。支配状態の数によってレベルが上がるのかも。


 とりあえず、念話を試してみよう。



 〈聞こえるかい〉


「? 」


 声の出処を探してる。つまり、今の念話みたいなのが聞こえたわけだ。かなり簡単にできる。



 〈これは念話といって、離れたところでも会話ができるものだよ〉



「どうやって、やる?」


 〈心の中でこの人に話しかけようと思い浮かべながら話すとできるよ〉



「………………」



 集中してる。ごつい奴が顔を顰めて集中してるのは、なかなかいい。



 〈できた〉


 〈ならこれで案内するから、よろしくねー〉


 〈わかった〉



「まず、あっちの方に行って、右に曲がって、ずっと行ったところで右に行くといい所があるよ」


「みぎ?」


 そういえば人間くらいしか使わないか、そんな言葉。箸の例えは使えないから、剣がいいかな。


「剣を構えてくれる?」


 構えてくれた。右利きのようだ。



「君でいうと、剣をを持つ方が右だね」


「わかった、いく」


 俺の方でも少し手を回しておくか。


 〈しもしもー、ボスだよー〉


 …………


 無視。いや、念話の仕方がわかんないのか。とりあえず要件だけ伝えとこう。


 〈えっと、オーガの群れを異界人が湧いて出てくる町に向かわせるから、上手く誤魔化して、邪魔しないでね〉



 …………


 〈南からできるだけ王都を迂回させるから。ちなみに念話は、心の中でボクを思い浮かべながら話すとできるよ〉



 …………

 さすがにそんなすぐ出来ないか。


 〈ま、よろしくね〉





 こんなとこか。オーガたちは、早く着いても1日、集団で移動だからもう少しかかるかな。



 その前に実験をば。



「ねぇ、オーガのリーダーくん、君に力を授けよう」


「ちから? 強くなる?」


「そうだよ! 早速やるよ。ほんのちょびっっっっと【深化】」



 オーガのリーダーくんの心臓部分っぽいところが黒くなった。上手くいった様子。かなり抑えてやったから昨日の俺みたいにすぐ死ぬことはないだろう。


 部下に危険なパワーアップをさせるなんて、すごい黒幕っぽい!


 俺が関わるのはこの辺にしとこう。

 襲撃の様子は掲示板で見るか。楽しみだ。

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