第66話 作戦

 僕らはこのことを王女に伝えた。王女にしかわからない事情があるかも知れないからだ。王子の記憶があるとは言え、いまだに思い出していない事、忘れていることなどあると感じていたからだ。どうも、肝心なことは隠されているように思える。恐らくは、主導権を握ったあの器の主こそが、すべてを把握しているのだろう。


そこで王女から興味深い話を聞かされた。なんでも、地下都市ほどの大きさはないものの、大阪の地下には襲撃者向けの武器工場があるらしい。そのほかにも、地方にも小さな基地が存在するとのことだ。あくまでも警戒所的なもので、多くの兵が駐屯しているわけではないらしい。


東京の地下都市を警視庁とすれば、派出所程度の規模である。それでも、咄嗟に身を隠すときなどにも便利なように作られているようだ。

そしてもう一つ。襲撃を事前に察知するための観測装置が、富士の頂上付近の山中にあると言うことだ。この施設は、僕の記憶にも残っており、正確な場所もわかっている。僕らはそれらの場所を示した地図を細かく分析し、一つの結論に達した。


これからの場所を王女の支配下に置くこと。それだけでも王子との交渉を持ちかけるには十分だろう。その上で、大阪の武器工場に於いて、より効果的な武器を作ることに成功すれば、交渉の成功も容易くなるだろう。なにしろ、実際に戦ったことのある者が、仲間の中には多数いるからだ。


襲撃のことも考慮に入れて、富士の施設は後回しにした。近場の警戒所を順次手中に収めるチームと、大坂まで一気に下り、武器工場を制圧するチームとに分けた。工場の方が警備も多いだろうと、九条をはじめとする熟練兵を組み込んだ。


警戒所には2チーム6人態勢で5部隊を組織した。それを王女の地図を頼りに片っ端から落としていくのだ。大阪には、僕らを含め8部隊を向かわせることにした。王女とその護衛は、落とされた警戒所を順に移動し、最終的に大阪に集まることになった。


この奥地の村にも、避難民が次から次へと押し寄せ、手狭になったこともあるが、一か所に留まる危険を考慮した。移動し続けていれば、例え見つかったとしても、襲撃部隊本隊が到着する頃には移動を済ませているはずだからだ。王女と戦を得意としない者で6チームを組んだ。最初の警戒所が落とされてから、王女を守り出発する手はずになっている。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る