第49話 王の所在
「王女は第二と言いましたが、第一王女はどちらに?」
「あら、国家と呼んでも構いませんのに」
「いえ、それは別の意味で言い難く……」
「そうですか、それは構いませんが、第一王女はほかの場所に居ります」
「と言いますと?」
「あなた方の呼び名だと、アメリカ大陸です」
「なるほど。で、アメリカでも同じようなことになっているのですか?」
「彼女は政策などには無頓着のようで……」と王女は言葉を濁した。あまり詳しくは聞かされていないようだ。と言うよりは、同じような事が起こっていても不思議ではないとも聞こえた。
「王族の方々はどのくらい避難できたのですか?」
「地球に到着したのは十名ほどだと聞かされています」
「はっきりとはわからないと?」
「肝心の王の所在が掴めないのです」
「生存も危ういと?」
「いえ、そうではなく、安全のために極秘扱いなのです」
「同じ王族にも?」と尋ねた後に、王子の横暴や第一王女の無関心を思い出した。彼らと言うか我々も、人間のように千差万別なのだ。
「側近など、ごく限られた者だけが知り、世話をしているとしか」
「そうですか。賛同できる王族が居ればと思ったのですが」
「がっかりさせてしまってごめんなさいね」
「王女のせいではありませんよ。それに、ここ日本では、対抗する王族が王子一人とも判明したので」
「そうですね。ここには他の王族はいません」と王女はにこやかに答えた。僕としては王の所在が気にはなったが、王女の言うように、恐らくは知らないのだろう。知っていたならば、僕らに味方するよりも、触接相談することも出来たはずだ。そう言った煩わしさから隠れるためにも、居所を極秘にしている可能性もある。
今後の取るべき動きに結論が出た以上、僕らは出来る限りのことをすると誓った。僕らが小部屋から顔を出すと、待ちかねていたように視線が一斉に僕らに向けられた。そして黙って言葉を待った。
「最初に言っておく。王女は味方だ」彼らが最も知りたいのはそこだろう。案の定、僕の声が場内に響くと一斉に歓声が上がり、王女に向かって膝をついた。忠誠の表れだろう。
「各リーダーは集まってくれ、詳細を詰めたい」と言うと、全員が慌ただしく動き始めた。
「王女様は如何いたしますか?」と九条が訊ねると、
「私の思惑はすでに王子にも知らされているでしょう。このまま皆と行動を共にしたいと思います」戻れば危険にあうかも知れないようだ。それだけ、王子の力は大きいということだろう。
「バレているのですか?」
「ええ。何度か密使を送りましたが、誰も戻ってきていません。私の手の者だとは感づいているでしょう」
「なにを探らせようと?」
「クローンについてです。王子の言う通りなのかどうか」
「密使が戻らぬことで、疑念を抱いたわけですね」
「ええ」
「我々も、そのクローン生産場所に秘密があると睨んでいます。場所などはご存じですか?」
「知っていますが、侵入は容易ではありませんよ」
「わかっています」聞かされた場所は予想通りの場所だった。しかし、密使からの連絡も途絶え、王女にはそれ以上の情報はなかった。あとは、寝返った警備兵の仕事だ。
「無理に入り込む必要はない。警部状況を調べてほしい」と警部兵のリーダーに言うと、さっそく行動を開始した。彼らが探っている間に、僕らは人員や武器の補充に走り回った。集まった同志を効率の良いチーム分けも行った。指揮系統も確立させ、徐々に大きな部隊へと姿を変えていった。それには第二王女の存在も大きい。また、警備部隊からの報告によれば、警備は厚くなり兵士たちにも殺気立った様子が見えたらしいが、表立った捜索はなされていないと言うことだ。恐らくは、僕らが姿を現すのを待ち構えているのだろう。対抗するための綿密な作戦を立てるには、もっと情報を得る必要があった。
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