第24話 精神体

 その時、不意に気が付いたことがあった。当たり前すぎて気にもしていなかったことだ。しかし、聞かなくてはならない事でもあった。


「ところで、九条さんは四回も任務に赴いたわけですが、それ以外の時はどこで何をしているんですか?」

「それ以外って?」

「だから、任務中以外です」

「その時は休んでるわよ」

「休んでる?」

「ええ。休養を取ってるのよ」

「ほう。で、どこで?」

「どこって……」と、九条は答えにつまずいた。


僕が知りたいのは、四回の任務以外の時、その体はどこにあるかと言うことだ。九条たちは任務時には作られた身体と融合し、遂行すると言っていた。では、作られた身体と融合していない時は、どこで何をしているのかが気になったのだ。僕らも同類だと言っていた以上、僕らも任務以外の時は、同じ場所に居るはずだからだ。


休養と言われれば、想像するのは浜辺でのんびりとか、日本では温泉に浸かって英気を養うとか、そんな想像ならばつくが、人間ではない我々はどこで何をして過ごすのだろうかと考えた。地球に逃げてきているならば、国もなければ都市もないだろう。それが気がかりだったのだ。それは今後の行先にも関係がある。


「そのうち話すつもりだったけど、説明するしかなさそうね」と、僕が答えをじっと待っていると、九条はそう言った。僕が諦めないと観念したようだ。

「いいのか?インプットミスだとしたら、ショックはでかいぞ?」と、秋葉が心配そうに言った。

「ショック?」休養することのどの辺がショックに感じるのだろうか。

「いいわ。地球が戦いに巻き込まれた理由でもあるし、ちゃんと説明するわ」

と、九条は言うと、崩れた壁際に腰を下ろした。


「みんなも座れば?」と言う九条の表情は暗い。しかも、わざわざ座って話すなど、なにか特別な理由でもありそうで、嫌な予感しかしなかった。小林も康子も腰を下ろしたが、秋葉と近藤は離れた場所で周囲を警戒するように立っていた。


「あなた達も任務が終わり戻れば、すべてを思い出すだろうけど、今、本当に聞きたいの?」

「ええ。気になるので」

「これだけは先に言っておくわ。人間のような考え方と感情を捨てなさい。これから話すことはそう言うことよ。いいわね?」

「ええ」躊躇わずにそう答えると、九条はため息を漏らした。


「わかったわ……。私たちの星は平和で文明も極度に発展した星だった。とは言え、他の星に向かうとかはなかった。だって、自分たちの星で十分幸せだったからね。でも、そんな私たちの星が襲われたの。私たちくらいに発展した星だったけど、彼らはとても邪悪だった。対抗する武器などもなかったけど、それは問題なく作れたわ。彼らの武器を真似てね。でも、大きな違いがあった。彼らと私たちには、知らなかった大きな違いがあったの。それは……、私たちには実態がないということ」

「え?実体がない?」突飛な声は三人同時に発せられた。


「そう。私たちは精神体だけで構築されてるの。ほかの星などに興味もなかった私たちは、そんなことさえ知らなかったのよ」少しでも情報が欲しいと思い、話を聞きたいと言ったが、全く予期せぬ返答に言葉を失った。

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