第22話 判明した理由
「え?どういうこと?」
「簡単に言えば、あなた達はクローン。それと少しの技術が融合したハイブリッドなの」
「え?クローン?」
「そうよ。地球での任務に適するように、地球人のクローンを使っているのよ」
「じゃ、僕と言う存在はこの地球に居たってことですね」
「ええ、今回の活動場所から言って、日本人のクローンを用いた事は間違いがないわ。私たちもそうだし」何故か、その答えが嬉しかった。
「それじゃ、家族が居たという記憶も嘘ではないのかも」康子は少し安心したかのように言った。彼女の中では、どんな状況になっても家族との絆は嘘ではなかったと思いたいのだろう。恐らくは、祖母の死を悟って家出したことも、実際に起きた事だったのかも知れない。
「そうね。記憶を植え付ける上で、基本となる情報として真実を混ぜているから、あなた達に家族が居たのは本当だと思うわ」
「でもなんで、そんな面相臭いことをするんだ?」お、小林は怒りを含ませ訊ねた。
「もちろん、地球人には知られないためよ。そのために、非常事態以外は地球人に成りきれる必要があるの」
「今回の事が非常事態だとは分かるけど、そのために、わざわざ大学にまで通わせるのか?」と、納得する様子はない。
「何年もここに居たと思ってるだろうけど、実際には二か月くらいのことよ」
「え?じゃ、バイトとかは?」僕も思わず声を出していた。
「してないわよ。してると思っているだけ」
「それなら、緊急事態が起きてからでもいいのでは?」と、わざわざ先に待機する必要性を感じられずに訊ねると、
「私たちを見て」と、九条はくるりと回った。
「見ましたが」
「日本人にしか見えないでしょ?」
「ええ。確かにその通りですが」
「じゃあ、アンドロイドに見える?」
「え?いえ、見えませんけど」
「そうでしょ。聞くけど、あなた達はなんで人間じゃないと思ったの?」
「いやそれは、あの再生を……」
「あーあれを見たのね。じゃあ、それが無ければ今でも人間だと思っていたでしょ?」
「たぶん、なんで無事なんだろうとは不思議に思いますけど」
「それが大事なのよ。もしも今、他の人と会ったとしても、誰も人間じゃないとは思わないでしょう」
「あ。それでか」と、小林も理解したように呟いた。
「そう。まずは人間であると周りから見られることが目的なの。言葉や行動などもね。だから早めに送り込んで馴染ませるのよ」
「九条さんは四回目と言いましたよね?と言うことは、他の国でも活動したということでは?そして今回は日本だった。人間に見られる以上に、日本人にも見られなくてはならない。と言うことですね?」と、康子が確認するように言うと、
「正解。不良品だけど、馬鹿ではないみたいね」と、感心したように答えた。
「馬鹿って……」と、康子が不満そうな顔を見せると、
「いい?私たちの存在を今の人類に見せるわけにはいかないの。それが最も重要なのよ。存在がバレたらどうなると思う?人間はその技術を得ようと躍起になるでしょうね。戦争も辞さないくらいに」
「霧が見えるのもそのためなんですよね?」
「ええ。捜索犬みたいに匂いを辿りたくはないでしょ?」
「なんで、そんな地球に介入しているんですか?」
「今回の攻撃も、私たちが理由だからよ」
「私たち?」
「種族としての私たちね。私たちの争いに、地球が巻き込まれているのよ」
「だから、派遣されるのか」
「ええ。そういうこと。せめてもの罪滅ぼしかな」
「それじゃ、これから僕らはどうすれば」
「インプットの不手際だから仕方がないわ。大丈夫、連れて行くわ」
「よかった。助かります」
「いいえ。そう言う指令が私たちの元へ届いたのよ」と、恐ろしいことをさらりと言い放った。言い換えれば、僕たちは常に監視されてると言うことだ。今のこの状況も理解した上で、この三人組を向かわせたのだろう。
「そろそろ人間が来るぞ」と、秋葉が言うと、
「じゃ、行きましょうか」と九条に急かされた。何はともあれ、この状況を理解している者に会えただけでも、この先の行動の救いになるだろう。
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