8



あいしてる




そう、自分が言われることが本当にあるのかと、耳を疑って。


それから、熱くなる頬に手を置くけれど、混乱したままで。




下にいた鞠たちがこちらを見て顔を傾げている間にも、私の頭の中は氷でいっぱいになっていた。


そんな氷はというと、飄々と、鞠たち4人に手を振って笑っていたわけだけれども。




観覧車はゆっくりと、今度は下へと降りていく。




「ひ、氷は……ずるい」




ようやく、震えるような声が自分から出てきたと思ったら、そんなことしか言えなかった。




「えー、なにがぁ?」


「……ずるい」


「本心ですけど」




こんな狭い空間で、逃げ場なんてなくて、誰にも邪魔されなくて、この園の中で空に一番近いところで、そんな。


そんなこと言われてしまったら、爆発してしまいそうなくらいに、気持ちが高ぶってしまう。




「ドキドキだね」


「……ッ」


「俺だってすごく、すごく胸がいっぱいなんだよ、和香」




そんなこと言って、氷は私の頭に頭を預けてくる。


コツンと優しく当たった頭、絶対みんなから見られてるじゃん、と思うけれど、このままでいたくもあって。




ゆるりと降りていくそののどかな時間の中で、呼吸を整えた。




「俺、こんな幸せな気持ちにしてくれる人と出会えるなんて思ってなかったんだぁ」


「……」


「和香といるとすごく、心が落ち着く。ドキドキしてんのに、安心する」


「……それ言ってて恥ずかしくないの?」


「ちょーはずい。でも伝わって欲しいの」

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