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「てっぺんてさ、誰からも見えない角度だよねー」


「何、急に」


「ふふ」




私は、そうなにか企んでいる氷の顔を見て、ふと前回のことを思い出す。


獲物を狙うような真剣な瞳……そう、あの瞳で。


頂上からしばらく、そう、き、きすを……結構長いことされたということを。




あの頃はまだ付き合っていなくて、けれど私の心が氷に傾き始めたのも、あのキスがきっかけで……。




なんて恥ずかしいことを思い出してしまったんだ。




手に手を重ねて、絡めるようにしてくる氷に、私は顔を向けられずにいる。




「いつもてっぺんからの景色見せてあげられなくて、ごめんね」


「……確定事項のように言う」


「だってもうわかってるでしょ?ふふ」




誰からの視界にも入らない角度。


氷は私の頬にキスを落とし、それから唇にもゆるりと重ねるだけのキスを落とした。


前回と違って、ソフトに、けれど愛情のこもっているようなそのキスに、私はカッと顔が熱くなるのを感じた。




「あいしてる」


「!?」


「あいしてるよ、和香」


「な、あ、あいっ……!?」




そんな言葉が氷から出てくるなんて、欠片も思っていなくて。




「ほら、てっぺん過ぎちゃったよ。みんなに見られちゃう、可愛い和香の真っ赤な顔」


「やめっ……ばかっ」




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