6



二度目の観覧車は夕方。


私は佐藤と共に二人で乗り、あとの四人で次のゴンドラに乗った。


佐藤は始終、私の手を繋いでいて、指を絡ませながら外を一緒に眺めていた。




「人がゴミのようだ」


「言いたかっただけでしょ」


「バレたぁ?」




ふふふ、と笑う佐藤はご機嫌だ。


どうやらお気に召しているご様子。


よかった。




下を見れば、鞠と比嘉くんがこちらに手を振ってくれていたので、佐藤と一緒に手を振り返した。




「ねぇねぇ和香ぁ」


「なに佐藤」


「ふたりっきりなんだけど」


「ん?」


「名前で、呼んでくれねぇの?」




下を向いていた佐藤の視線が、私の顔に移る。


じっと見つめてくる佐藤は、今日は女装をしていない、男の人の顔で。




こくりと、喉が鳴った。


緊張、する。


顔が暑くなってきて、手汗がじわっと出てきてしまっていた。




「……ひ、ひょう」


「うん、和香。今日も可愛いよ」


「ちょ、急に何……」




友達モードから一変、急に彼氏モードに移る自分の彼氏に、未だに慣れない。




「みんなに見守られてる中で、和香を口説き落とすプレイ」


「え、最低」


「俺の可愛い彼女を口説いて何が悪い?」




ゴンドラは徐々に、てっぺんへと近づいて行く。

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