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傘を取ってきてカフェまで戻ると、既に佐藤たちに溶け込んでいた比嘉くん。




「へぇ、じゃああの女装だ男装だって騒ぎの中心にいたのは君ですか」


「てへぺろ」


「それもよく丸二年間も隠してこられましたね……」


「これにはふっかぁーい事情があんの」




さすがコミュ強佐藤。


もう仲良くお話しているじゃないか。


緑はまだ警戒気味かな。


渚くんはいつも通りのすました顔してカフェラテを飲んでいた。




「あ、和香とまりりんおかえりぃー!」


「ただいま。ほら鞠、どうぞ」


「あ!その……」




珍しく私の後ろにいた鞠が、髪をいじりながらてとてと前へ出る。




「あの、先日は傘ありがとうございました!ひ、比嘉くん……?」


「はい、無事帰れたようで良かったです」


「ひぁっ」




傘を受け取った比嘉くんのまぶしい笑みに、鞠は浄化されつつあった。


なんだそのぺっかーとした天使の笑みは。


佐藤なんてまぶしすぎて目こんなほっそくなってしまっているじゃないか。




「まぶしい」


「まぶしいわね」


「穢れを知らない目をしている」


「え?どうしました?」




比嘉くんは私たちの反応が良くわからない様子。




「あ、気にしなくて大丈夫です。ちょっと浄化されている者が数名いるだけなので」


「浄化……?」




こくびを傾げる比嘉くんもなんというか……天使のようだった。




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