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「鞠、どうしたの?」




そう鞠に尋ねると、彼女はその持っていた黒い傘を持ち上げて言う。




「み、見知らぬ男の子が貸してくれたんだけど……見知らぬから返せないよっ!!」


「え!?借りたの?」


「か、借りちゃった!!返さなくていいって言われたけど、でも、でもこれ普通の傘だよ!?どうしよう……」




どうやら鞠は今日傘を持ってきておらず、空を見上げて「どうしよう……」と悩んでいるところに、さわやかな青年が来て、傘を貸してくれてそのまま走って行ってしまった……という。




「なにそのイケメン」


「ちょっと和香!?イケメンに靡かないで!?」


「いや、それは俺が聞いてもイケメンだわ」




もすもすとハンバーガーを食べる渚くんのお墨付きである。


どこの誰だかもわからないイケメンくんが、傘を貸してくれたのか……すごいな、現実にそんなことあるのか。




「鞠、なんか覚えてることとか、特徴とかはないの?」


「特徴…特徴か……あ!ピアスが十字架で、髪がグレーだった」




私はその特徴じゃわからないな……普段から人の顔あんまり見ていないから。


でもコミュ力おばけの佐藤ならもしかして。




「……比嘉ひがくんか?」


「比嘉くんぽいね」




佐藤、次いで渚くんと、その人の名前を出した。




「ひが、くん?」


「ふんわり笑顔で言葉遣いが丁寧な人」


「あ!そういえば、貸してくれた時ふわっと笑ったかも……」




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