5



「和香は俺が男をナンパする奴だと思ってたの!?またって何!?」


「彼氏の扱い酷ぇな」


「しゃべった……」


「しゃべるわ。なんだと思われてたんだ俺」




うんともすんとも言わなそうな儚げな、人形みたいな印象の人から、声が出てきたから……思わずそう呟いてしまっていた、申し訳ない。


背は佐藤より少し高いけれど、厳つい感じはなくて……なんだろう、綺麗な人だ。




「私は話しかけられた時のことナンパだと思ってるから」


「酷くない!?そんなこと思ってたの!?」


「性別聞いてからそう思うようになってきただけだから、当時は『馴れ馴れしい人だな』ってくらいで……」


「それも酷くない!!?」




氷とそんな言い争い(一方的にダメージを与えているのは私)をしていると、一緒に居た男がぷふっと吹き出し、肩を震わせていた。


あ……笑うんだこの人。




「すーげぇ気の毒。ご愁傷さま」


「彼女が彼氏に冷たい時の対処法」


「愛されてんじゃね?知らんけど」




氷がまともに同性同士で話しているところを初めて見て、私はなんだか少し心がむずっとする。


見慣れない光景だ……。




今まではもちろんギャル姿で、男と話すことはあったし、気軽な感じで、それはもう軽いな……という感覚で見ていたけれど(それも失礼)。


私たちといる時はギャルの名残が未だに残っている喋り方だったから、ちょっと同性が混じるとどうなるのか気になってしまう。


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