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私の両手をギュッと握って前のめりで訴えてくれるけれど、ごめん私緑じゃないんだ。


キラキラと潤んだ瞳を向けてくる、男の姿の彼氏。


まだまだギャルが抜けきっていないな。




「マスカラも落ちて広がって、めっちゃパンダになってて、蜜ずっと俺見ながら咳して涙目で腹抱えて苦しそうにしてたんだよ」


「めっちゃ笑われてんじゃない」


「叔父さんからポーチ受け取った時、マジで神だと思った。これは信仰するしかない」


「緑の呆れ顔が目に浮かぶわ」




まぁ、それほどそのポーチが役に立ってくれたということなんだろう。


よかったね氷。


私も鞠もそんな女子力の詰め合わせみたいなものなんて持ってなかったろうから、本当に感謝してるよ緑。




無事にあの場で理事長から緑のポーチを受け取った氷は、その中にあったメイク落としのシートで無事に化粧を落とせたらしい。


メイクをし直すかも考えたけれど、どうせまたぐちゃぐちゃになりそうだから、やめたそうだ。




家にはお風呂に入って服も変えてから、わざわざお泊まり用にでかい鞄をさげて来たらしい。




「連絡せずに来て、もし私がいなかったらどうすんのよ」


「あの時間和香はお風呂入ってからもう休む一択でわざわざ外出る方が稀でしょう?」




よくご存知で。

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