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ひとまず、蜜ちゃんからの拒絶はされていなかったみたいでよかった。
私たちが不安に思っていた、妹からの拒絶という点はなかったようで。
けれど、やはり丸三年間寝ていた小さな体は、本来の力を取り戻すまでにまだまだ時間がかかるようだった。
「声がまだ上手く出せないし、力も入らないから、しばらくまだ病院に世話になる」
「そう……」
目覚めたばかりの、きっとまだ精神年齢は中学生の頃のままだろう彼女。
丸三年間、眠りについていたということは、きっと私たちが想像する以上に厳しい現実が待ち受けている気がする。
これから、高校、大学、受験勉強、友達関係、同学年と違う道を歩むことに、世間の風当たりは強いだろう。
体だって完全に元の状態まで戻ってくれるのかもわからない。
親を突然失ったという精神的な苦しみも重なることだろうし。
そもそも交通事故を起こした肉体はもう治っていたとしても、それ以外の実際動いてみてからじゃないとわからない不調なんてものは、本人じゃないとわからないのだから。
どれだけ私たちが……佐藤氷によって集められた私たち4人でケアしたり勉強を教えたり、その先を導いていけたとしても……蜜ちゃんの中に芽生えてしまう苦しみや、悲しみにまで干渉は出来ない。
どんなに知恵を出し合ったって、本人にしか乗り越えられない部分に、私たちは触れることが出来ない。
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