6



飲み終えたコップを机に置くと、氷はベッドの背中側に両手をついて、相変わらず天井を視界に入れる。




背中を押すなんて、私たちは氷にとって、酷なことをしてしまったのだろうか。


ちゃんと、二人は話が出来たのだろうか。


既に昨日は終わっていることなのに、胸が痛くなるほどの不安に包まれてしまう。




「和香たちが、背中を押してくれたから」


「……うん」


「……すげぇビビりながら、それでも蜜と、顔を合わせられた」




彼の手が、私の片手を包み込む。




「誰?って、言われてきた。まぁ、そうなるよな、そりゃ」


「…………ふふっ……ごめん」


「この雰囲気で笑っちゃう?」


「だって……ギャルのまま行ったでしょう?あまりにも見慣れてたせいで、私たちも見送ってから気付いたけど」


「そう、それ。最初それ気付かなくて、マジで俺の記憶だけごっそり無くしたのかと思って、ちょー焦った」




「失敗したわー」なんて呟きながら、氷は背中をベッドに付ける。


ははっと乾いた笑みを零すけれど、それがどんな意味を含んでいるのか、まだ私にはわからなかった。




「そんで、俺の方が取り乱しちゃって、看護師さんとかに宥められて」


「宥めてもらってきたの?」


「……俺が自分より取り乱すから、蜜の方が冷静になってくれて……声で俺だって気付いてくれて。看護師さん達にもお兄さんだったのかって驚かれてきた」


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