5
しぶしぶ私を離してくれた氷から離れ、冷蔵庫からペットボトルを取り出して、2つのコップに注いだ。
私は去年、寝起きに脱水症状でフラフラになったことがあるので、このままイチャイチャしていたらまた二の舞になりそうで怖い。
布団と氷に包まれていた中は、すごく暑かったんだ。
氷って名前のくせに、暑い。
「氷も飲んで」
「ありがと」
「ん」
ようやくしっかりと目の覚めた私は、昨日のことを思い返す。
そうだ、妹さんのこと聞けないまま寝ちゃったんだった。
「それで、昨日どうだったの?」
お水を飲み終えたコップを机に置いて、氷に向く。
一瞬絡まった視線を斜め下に逸らした彼は、コップの中身を一口含んでから小さく口を開いた。
「……妹、と、会ってきた」
「ちゃんと会えたのね。……あ、話すの嫌なら、無理には聞かない、けど」
「和香には聞いて欲しい」
はっと、嘲るような笑みを零し、彼の視線は天井に向く。
昨日を強く、思い返しているようだった。
「すーげぇ、荒れてた。筋肉の衰えてる力の入らない腕で枕を叩きながら、すーげぇ泣いてて。病室に入る足がそこで、止まった」
「……まだパニックのままだったの……?」
「そう、俺が行った時もまだパニックのままで、自分とか人とか、何かを傷付けるようなことはしてなかったみたいだけど……やっぱり親のこと、受け入れられてないままだったから」
氷の手が胸元で、服をギュッと強く掴む。
苦しそうで、今にも泣いてしまいそうな表情で、私まで息が詰まりそうになった。
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